大みそか、除夜の鐘を聞きながら年を越すが、この鐘は108回撞かれる。これは「煩悩」の数がそれだけあるとされているからだ。1年の終わりに、すべての煩悩を消し、新たな気持ちで新年を迎えたいという人々の願いが込められているのだ。
とはいえ、煩悩を滅することは並大抵ではない。煩悩を滅するとは、悟りを開くことだからだ。それならば、自分を奮い立たせることに、煩悩を活用するべきではないのか。
そう唱えているのが、『煩悩バンザイ!』(向谷匡史/著、フォレスト出版/刊)だ。
■「煩悩」とは何?
そもそも「煩悩」とは何なのかを説明しよう。
「煩悩」には「貪・瞋・痴・慢・疑・悪見」の6種の根本煩悩というものがあり、次のような意味を持つという。
貪……「むさぼりの心」「執着する心」
瞋……「怒りの心」
痴……「愚かさ」
慢……「うぬぼれる心」
疑……「猜疑にとらわれた心」
悪見……「間違った事を強く思い込み、まことの道理を知らないことから生ずる心」
このうち「貪・瞋・痴」の3つをとくに「三毒」と呼び、すべての煩悩はここから生ずると考えられている。
6種の根本煩悩を根っことして、さまざまな枝を伸ばしていき、総計108になるというわけだ。
■妬みをプラスに変える
楽しそうな写真をアップしている他人のSNSを見て妬む。出世の早い同期を妬む。ついつい、他人を妬んでしまうことはあるかもしれない。ねたみは「嫉」という煩悩であり、「瞋」を根っことしている。
仏教では「ねたんではならない」と教えているが、それは、嫉妬が高じてくると、相手の不幸を願うまでにエスカレートしていくからだ。
しかし、ねたみという煩悩は、抱き方によってプラスに転じることができる。出世競争で先を越されれば、誰だって嫉妬心を抱くものだ。それはいいが、「失敗すればいいのに」と不幸を願うか、「巻き返してやる」とファイトを燃やすか、その違いが大事なのだ。