「ハートで感じたら走り出せ!」
この信念のもと、「新しいこと」や「スピード」にこだわり、業界初、日本初に果敢にチャレンジしていくことで売上を劇的に伸ばした会社がある――NTTぷららである。
ぷららの名前に馴染みがなくても映像配信サービス「ひかりTV」の運営会社といえば、わかる人もいるだろう。NTTぷららはこの「ひかりTV」を提供し、2015年2月に300万会員を突破。今なお進化しつづけている。
しかし、そんなNTTぷららが歩んだ道は決して平坦な道ではなかった。
そもそもNTTぷららの前身であるジーアールホームネットは、創業から2年半で37億円もの累積損失を出していた。
『ハートで感じたら走り出せ!――テレビもスマホと同様に進化する』(ダイヤモンド社/刊)の著者、板東浩二氏はこのタイミングで同社の三代目となる社長に就任し、業績の回復を一手に任されることになったのだ。
しかし、着任した直後にNTT本社から会社清算を言い渡されるという窮地にまで立たされた。
即時清算は免れたものの、事業存続の条件は「手元の資金を使い果たす前に単月黒字にする」こと。その時点で手元の資金は3億円。しかも毎月の収支は1億円以上の赤字。つまり、時間的猶予は3カ月しかなかった。加えて当時の板東氏は経営の素人。目が回って倒れそうな状況である。
そのような状況下にあっては内勤も役員も関係ない。全社一丸となって営業を行ない、当時の主な収入源であったインターネットサービスプロバイダ事業で新規会員獲得に奔走したという。
こうした必死の取り組みと経営の抜本的見直しによるコストカットの甲斐あって、何とか期限内に黒字化を達成した板東氏は、その後「映像サービスは必ず世の中に普及する」との信念に基づき、現在の「ひかりTV」の前身となる映像サービス「4th MEDIA」を2004年より提供した。そして、2008年にはNTTグループ内の映像サービスを統合し、満を持して「ひかりTV」の提供を開始。このスピード感こそ、タイトルの「ハートで感じたら走り出せ!」の由来でもある。
しかし「ひかりTV」の開始にあたっては、映像配信サービスに不可欠である「コンテンツ」の調達など大変な苦労があった。話題性と魅力を兼ね備えたコンテンツがないことには、事業は成功しない。当時のNTTぷららには日本や海外のコンテンツ業界とのコネクションなどなく、そもそも誰と交渉していいかもわからない。この状態からコネクション作りに注力し、これまでになかったブロードバンドを使った映像配信サービスを理解してもらい、契約書を交わしてコンテンツを提供してもらうまでに数年間を要したという。
困難な道のりだが、コンテンツの充実や機能の拡充などにより「ひかりTV」は会員数を飛躍的に伸ばし、売上は板東氏の社長就任当時から約100倍にまで伸ばすことに成功した。
「ひかりTV」は、日本初となる商用4Kサービスの提供や、来るべきスマートTV時代に向けてさらに進化しようとしている。どん底を経験して、這い上がり、そして時代の先端へ。板東氏の気骨とNTTぷららの取り組みがつづられた本書は、多くのビジネスパーソンに学びを与え、仕事への情熱を呼び覚ましてくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。