──Cさんにも、孫社長の経営手法を学ぼうという意図があったんですね。ちなみに、一般の社員の前に孫さんが出てくることはあるんですか?
C「ほとんどないですね。ソフトバンクの起業当初は、本田宗一郎に倣い、アルバイト社員の前でみかん箱の上に立って、『わが社は、いずれ1兆円企業になる』と鼓舞したそうですが、この規模になると全体には目が届かないでしょう。はっきり言ってしまうと、ほかの大企業や役所と同じように、全体が”縦割り”の体質になりつつあって、孫社長レベルの経営者でもその弊害は抑えきれないんだな、と感じました。結果として、 新人の育成が進まなくなっている気がしますね」
A 「広告関連の部署では、孫社長が最終チェックをしたりするので、結構かかわることが多いみたい。世間で言われる”朝令暮改”で、死にそうになってる同期もいますね」
やっぱり不安定?ソフトバンクの将来
──レバレッジを利かせながら、早めに手を打ち続けることで、急成長を続けてきたように見えるソフトバンクですが、内部から見える「弱点」はありますか?
A「本人も話しているように、孫社長は早めに退任するだろうという噂は以前からあって、その際の後継者が社内で も明確に見えていないのが心配ですね。またソフトバンクは企業規模から考えると、財界でも、政界でも、あまり大きな存在感を示せていないと思います。有力 者とのパイプがない中で、孫正義というカリスマ経営者がいなくなったらどうなってしまうのか。このあやうさが、企業としての最大の弱点だと思います」
C「一度投資に失敗したら終わり、という緊張感は、社内にあったと思います。これだけ当たりくじばかりを引いて きたのだから、”たまたま”とか”運が良かった”ということではないと思うんですけど、投資額が増大していく中で、リスクも大きくなっていて。孫社長の理 念『考える前に動く』や、決め台詞の『やりましょう』が裏目に出るときが、そのうち来るかもしれませんよね」
B「これは内部・外部問わず、皆が思っていることですけど、やっぱり携帯電波の貧弱さは酷いですよね。社内にも『auに乗り換えたい』なんて人がいるくらいですから、早くなんとかしないと本当に危ない(笑)」
──やはり、孫社長の進退と、拡張路線の成否がポイントになると。
A「ちなみに、現在の連結従業員数は約2万人で、グループ企業は、非連結子会社を入れると200社ほど。10年に発表した『ソフトバンク 新30年ビジョン』【4】では、30年以内にグループ企業を5000社規模に拡大したい、としています。もちろん、従業員数も増やしていくでしょうけど、社内では『現状で考えると、4人にひとりが社長。ゆくゆくはおれたちも社長か?』なんて冗談を言っています」
C「後継者の育成も目に見えて進んでいない中で、拡張路線に人の質が伴っていかないと、どこかで破綻しそうな気がしますね」