──10年7月には、孫社長が直接指導にあたる、後継者発掘・育成機関「ソフトバンクアカデミア」【5】が誕生しましたが、その効果はなさそうですか?
C「孫社長を崇拝している人にとっては、直接話ができる素晴らしい場所だと思いますが、公開講座の内容を見る限 り、企業買収の”基本のキ”が話されていて、福岡ソフトバンクホークスの買収や『ホワイトプラン』の成功など、すでに語られている武勇伝がけっこう多い。卒業生に大成する人が出てくるかもしれないけれど、今のところ”IT業界の松下政経塾”とはならない気がします。それなら、日々の業務のなかから学んで独 立したほうがいいかなと」
結局ソフトバンクはオススメな会社?
──では、皆さんはソフトバンクで働くことをオススメできますか?
A「じゃあ、唯一現職の僕から(笑)。当然、今も自分は働いているわけで、オススメします。短所は長所の裏返しというか、先行きに少し不安を感じつつ僕が辞めていないのは、企業としての意思決定が速く、常に新しいことに挑戦できる環境だからです。一口に『営業』と いっても、ソフトバンクグループが持っているすべての商材を扱っていて、チャンスを見つければ、例えば『タッチ式の自動ドア』みたいなシステムも売ること ができる。ネット回線などメインの部分は押さえていますが、まだ全商品を把握していないくらいです」
──けっこう裁量があるんですね。
A「そうですね。どの商品が、どこで売れるのかと考えるのが楽しいし、”見切り発車”が許されるから、チャレンジしやすいんです。あとは福利厚生がしっかりしてくれれば……と思うのですが(笑)」
──すでに退社しているCさんはどうですか?
C「僕もオススメですよ。ただし、”この会社に骨をうずめる”という企業ではない。僕にとって最大のメリットは、人脈を作れることでした。独立後に大成している人も多いし、そういう人と、交流することができるのは、魅力ですね。ソフトバンクでの勤務を”めちゃく ちゃ忙しいモラトリアム期間”みたいにとらえている人も少なくない気がします。少なくとも僕には、そこから巣立つまで、ビジネスの基本を学んだり、人脈を 広げたりする、という場所でしたね」
──Bさんは今後も、ソフトバンクのグループ企業で働いていくつもりですか?
B「そうですね。ただ、Cさんも言うように、”じっくり腰を据えて”働きたい人にはオススメできません。グルー プ企業を転々としている人は多くて、みんなうわべの付き合いに慣れているからか、フランクに接してくれるんですよね。私としては、それはチームワークを高める意味で合理的だし、働いていて気持ちいいんですけど、出入りの激しい職場になじまない人はかえって心労がたまるかもしれません」(構成/玉井 光太郎)