マック、ナイキ…ファンと売上を増やす新しいサイトの仕組みとは?
深田 6月末から「Sprocket」というプラットフォームを提供していて、化粧品や健康食品を販売しているドクターシーラボさんのサイトで導入されました。ユーザーに3×3マスのビンゴを遊んでもらう「クエストビンゴ」というもので、あるページに行ったり、お試しを申し込んだりすると、マスにひとつ穴が開くようになっている。そうするとほかの穴も開けて、最終的に全部やってみたい衝動に駆られてしまう。いろいろ行動してもらって商品の良さを理解すると、自然と購入に結びつく可能性が高くなります。
――深田さんは、いつ頃からゲーミフィケーションに注目されたんでしょうか?
深田 ここ2年ぐらいです。ゆめみは2000年に起業して、BtoB(企業間取引)とBtoC(一般消費者取引)の両分野でモバイルサービスを提供してきました。現在では、マクドナルドやANAなどの、モバイルCRM(顧客関係管理)システムも扱っています。
BtoBとBtoCを両方やっているといい面があって、ゲーミフィケーションの面白さに気づいたのも、BtoCのソーシャルゲームをつくったことがきっかけです。最終的にうちのソーシャルゲームは、事業としてうまくいかなくて閉じてしまいましたが、なぜソーシャルゲームが盛り上がるのかという理由はわかった。
この仕組みでBtoBの事業でも価値を提案できないかなと考えていたら、「どうも米国ではゲーミフィケーションという言葉で呼ばれている」ことを知ったのです。やっぱりアメリカ人は名前をつけるのがうまい(笑)。
――それ以前に、ゲーミフィケーションのような考え方はなかったんでしょうか?
深田 ゲーミフィケーションのルーツを調べていくと結構面白くて、ソーシャルサービスの中で「リワード(報酬)をもらえるとうれしいよね」という話は、人がどういうことに対してやる気を出すのかという心理学につながるんです。人間を動機づけるメカニズムを実現しようということです。
もう少し詳しく説明すると、最初に「目的」があります。この仕事はなんのためにやるのかとか、どう世の中に影響するかといったことがわかると、やる気が出ますよね。次に「自律性」。1から10まですべて指示されるわけではなく、材料とゴールを示されて、どうやってやれば効率的に達成できるか考える余地があると、やる気につながる。そのあとが「有能感」。できた、達成した、スキルが上がったというフィードバックです。その3つのプロセスがぐるぐる回って、ゴールに近づいていく。
このメカニズムは、よくよく考えるとゲームで使われているのです。でも、ゲーム自体は心理学の知見に基づいてデザインされたわけではなく、どうしたらユーザーに遊んでもらえるか試行錯誤した結果、そのノウハウが磨かれていったわけです。そこにソーシャル性が加わることで、一人で遊ぶより継続的に回るような仕組みが出来上がる。だから人はソーシャルゲームにハマるのです。その仕組みはゲーム以外にも使えますよ、というのがゲーミフィケーションの考え方です。
(構成=広田稔)
※後半へ続く
<目次>
【1】突破力のグリー、戦略のDeNAにみるゲーム業界のミライ
【2】お客様も社内会議に参加!? オイシックス流ユニーク経営術
【3】マック、ナイキ…ファンと売上を増やす新しいサイトの仕組みとは?●深田浩嗣(ふかだ・こうじ)
株式会社ゆめみ代表取締役社長。京都大学大学院在学中の2000年1月、CEOの片岡俊行、CTOの中田稔と共にゆめみを設立。技術力を駆使してECシステム、メール配信システム、大規模CRMシステムやソーシャルゲームなどモバイルインターネットサービスの企画・開発等を手がける。ゲームで使われている要素をゲーム以外の領域に活用する「ゲーミフィケーション」の日本での第一人者。著書『ソーシャルゲームはなぜハマるのか』『ゲームにすればうまくいく』