日本プロ野球も、いよいよ佳境を迎えている。セ・パ両リーグとも激しい優勝争いが展開されるなか、セ・リーグ3連覇を狙った読売ジャイアンツ(巨人)は10月に入ってから突如、失速。東京ヤクルトスワローズ、阪神タイガースとの三つ巴の争いから脱落するかたちとなり、同時に今後の補強ポイントがひとつ、あらわになった。それは投手陣の整備である。
現在の巨人の投手陣を見てみると、先発陣は菅野智之、戸郷翔征、山口俊、メルセデス、高橋優貴と、一見バランス良く感じられるが、視野を広げてみると、将来的にバリバリ先発陣の柱として活躍できそうな投手は戸郷と高橋のみであることに気づく。それでも、右投手では戸郷に加え、平内龍太、山崎伊織、直江大輔、堀田賢慎と、将来的に柱になる可能性が高い投手はそこそこいる。だが、左投手に目を向けると、高橋を筆頭に横川凱、井上温大といった顔ぶれで、どの投手も技巧派。つまり本格派の左腕、しかも即戦力が不足しているという状況なのである。
こうして、今年の巨人の補強ポイントのひとつとして浮かび上がったのが、“本格派の即戦力左腕”というキーワード。本日開かれる注目のドラフト会議を前に、その補強ポイントと合致する投手を3人、紹介したい。
隅田知一郎(西日本工業大学)
まずは西日本工業大学の隅田知一郎だ。波佐見高校(長崎)3年生の2017年夏、同校の主戦投手として甲子園に出場を果たしている。
本番では開幕戦となった彦根東高校(滋賀)との一戦で先発。8回まで粘投をみせ、5対4とリードしていたものの、9回裏に同点とされ、2死二塁のピンチの場面で降板した。その後、後続が打たれて逆転サヨナラで初戦敗退を喫したが、この試合で当時自己最速タイの143キロをマークしている。
高校卒業後は九州地区大学野球連盟に加盟する西日本工業大に進学し、1年春からベンチ入り。全10戦中4試合(うち先発2)に起用され、日本文理大学との1回戦で初先発初勝利を収めた。以降、先発兼リリーフで投手陣を支え、4年春のリーグ戦を終えた段階で34試合に登板、158回3分の2を投げ、10勝5敗、195奪三振、防御率1.76の実績を残している。
なかでも12シーズンぶりの優勝を飾った4年春のリーグ戦では、プレーオフ4試合を含む全14試合中12試合に登板、57回3分の1を投げ、5勝1敗、防御率2.20の好成績をマークし、MVP及びベストナインを初受賞したのだった。
この直後、全国大会となる第70回全日本大学選手権に出場。初戦の上武大との一戦で先発し好投したものの、味方打線の援護に恵まれず0対1で完投負けしてしまった。それでも全国大会常連校の打線をわずか4安打に抑え、14奪三振をマーク。プロのスカウトからドラフト上位候補として高評価を受けることになったワケだ。
身長176センチで体重76キロ。野球選手としては少し小柄ながらも、直球の最速は150キロをマーク。常時140キロ前後から145キロ強のキレの良い球を投げ込む。さらに、得意な球種としてスライダーとチェンジアップを操るほか、カットボール、スプリット、フォーク、ツーシーム、カーブと、多彩な変化球の使い手である。直球に変化球を交えて内外角に投げ分ける、バランスのとれた本格派左腕なのだ。
特に左投手は右バッターのインコースへの真っすぐとスライダー、アウトコースへのチェンジアップというのは、プロでも活躍している投手が決め球として使っていることを考えると、隅田もそのなかに十分入っていける左腕だと考えられる。巨人のスカウトのひとりも、「ピッチングセンスが抜群でフォームのバランスも良く、完成度が高い。素晴らしい投手」と絶賛する。ケガさえなければ間違いなく1年目からローテーションに入っていけるハズだ。
佐藤隼輔(筑波大学)
続く2人目は筑波大学の佐藤隼輔である。高校は宮城・仙台高校に進学し、1年夏から背番号18で公式戦に出場していた。甲子園経験はなく、17年の高3夏の宮城大会ベスト8が最高成績だが、その際、全5試合を完投し、3回戦まで3戦続けて完封勝利を挙げるなど、29回連続無失点をマーク。なかでもプロ10球団のスカウトが視察に訪れた初戦の名取北高校戦では自己最多の18三振を奪い、5対0で完封する快投をみせている。
プロ志望届けを出せば指名確実といわれたものの、首都大学野球連盟に加盟する筑波大へ進学。大学では1年秋からリーグ戦に出場し、武蔵大学との2回戦で初登板初勝利を飾った。結局、5試合に登板して25回を投げ3勝0敗、24奪三振、防御率0.00(1位)という好成績を収めている。
以後、大学4年の春のリーグ戦終了時までに28試合に登板し、166回3分の2を投げ、10勝4敗、161奪三振、防御率1.46をマークしている。なかでも1年秋から翌2年春にかけて44回3分の2を連続無失点という好投を披露した。
国際大会にも2年夏の日米大学野球に出場。中継ぎとして全5試合にリリーフ登板し、自己最速となる151キロをマーク。計6回を投げ、被安打5、4奪三振、1失点、自責点0、防御率0.00という好成績で3大会ぶりの日本の優勝に貢献している。
身長181センチ、体重81キロという恵まれた体格から投げ込まれる直球は、最速151キロを計測。常時140キロ台中盤から後半をマークする。変化球はスライダーとチェンジアップを得意球とし、キレの良い直球にこの2種類の変化球を交えて三振を奪っていく投球スタイルだ。
制球力に多少荒削りなところもあるが、2ストライクから勝負できる力強い真っすぐを筆頭に、すべての球種が勝負球として使えるところが大きな魅力といえよう。巨人のスカウトの1人も、「ストレートにキレがあって、純粋に良い投手です」と高く評価している。
黒原拓未(関西学院大学)
最後の3人目は関西学院大学の黒原拓未だ。高校時代は和歌山の強豪・智弁和歌山高校でプレーし、1年秋からベンチ入り。3年生最後となった17年夏の甲子園に出場を果たしている。聖地では2回戦の大阪桐蔭との一戦で全国デビュー。優勝候補の筆頭相手に5回3分の1を投げて被安打6、奪三振4、失点1の粘投をみせたが、自慢の強力打線が振るわず、1-2で惜敗している。
高校卒業後は関西学生野球連盟に加盟する関西学院大に進学。1年春からリーグ戦に出場すると主に先発で全13試合中8試合、35回2/3を投げ、2勝3敗をマーク。防御率3.79は投手全体で9位の成績となり、ベスト10入りを果たした。
以降、4年春のリーグ戦終了時で44試合に登板、222回1/3を投げ、13勝15敗、178奪三振、防御率2.75を記録。なかでも14季ぶりに優勝した4年春のリーグ戦では8試合に登板し、51回1/3を投げ、最多の5勝(1敗)、42奪三振、防御率は1位となる驚異の0.70をマーク。MVP・最優秀投手賞・ベスト9を受賞した。
全国大会にはこの直後に行われた第70回全日本大学野球選手権に出場し、ベスト8入りに貢献。全3戦中2試合に先発し、1勝1敗。計12回を投げ、被安打10、11奪三振、防御率2.25の実績を残したのだった。
身長173センチ、体重76キロと小柄な左腕だが、最速は151キロ。常時130キロ台後半から145キロ強という力のある直球が武器だ。この直球の球威に加えて投球術でもプロのスカウトをうならせている。真っすぐで打者の内角を突き、そこにカットボールやチェンジアップ、スライダー、カーブを交えて打者を手玉に取っていくのである。
さらに特徴として、大学入学後に球速が大幅アップした点が挙げられよう。自己最速の151キロを叩き出したのは今年。4年春の立命館大との2回戦でのこと。さらなる伸びしろに期待できるワケだ。これには巨人のスカウトの1人も「球の強さが一番の魅力。投げっぷりがいいし、馬力が素晴らしい。ドラフト上位候補に入ってくる」と、自信に満ちた評価を下している。
以上の3投手に注目してみた。このなかから、果たして何人が栄光の巨人のユニフォームに袖を通すことになるのか。当然、この3人は他球団も徹底マークしている逸材だ。クジ運が悪い巨人は、獲得できるだろうか。