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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(5月第4週)

「今、投資!?」「今こそ公務員!?」で、企画力に差が出て「東洋経済」に軍配!

文=松井克明/FCP
post_159.jpg(左)「週刊東洋経済 5/26号」
(右)「週刊ダイヤモンド 5/26号」

 毎日の仕事に忙殺されて雑誌を読む間もないビジネスマン必読! 2大週刊経済誌「週刊東洋経済」と「週刊ダイヤモンド」を比べ読み。小難しい特集を裏読みしつつツッコミを入れ、最新の経済動向をピックアップする!

 今週号の経済2誌ははっきりとタイムリーさ、ちゃんとした取材をしたかどうかの差が読み応えに大きく出た。

 残念だったのは「週刊ダイヤモンド 5/26 号」。大特集は『老後難民にならない! 資産運用の鉄則』。タイトルだけを見ると「老後難民」というキーワードから、AIJ投資顧問の企業年金基金問題や、無年金問題、孤独死など社会派の取材ネタも入っているのかと思いきや、さにあらず。まったくそうした取材はなし。「今の40代は60代で『親の介護』『子の教育費』『自分の老後』の出費という三重苦になる」「60歳のときに3000万円あったとしても資産運用をしなければ、77.5歳で底をつく」といったフィデリティ退職・投資教育研究所のデータに丸乗り。資産運用をしなければ老後に困りますよ、という警告なのだが、データも2010年のもので、それほど目新しい内容ではない。

 たしかに「銀行・証券マンのセールストークにだまされるな」といった投資上の注意点も書いている。とくに目新しいのは悪評高い毎月分配型投資信託の記述だ。「毎月分配型の投資信託は投資元本を取り崩すタコ足配当が多い。このため、この2月から『特別分配金』と表記していた元本取り崩し分を、『元本払戻金』と表記するよう変更された」というニュースは知っておきたい。ただし、2カ月前の「週刊東洋経済 3/3号」の特集『親子で挑む資産運用』のほうが、通貨選択型の投信を勧めてくる店頭調査なども行い、ガッチリとした取材をしていて読み応えがあったのと比べると、弱い。

 ダイヤモンド編集部としては、今週の自信作は『60歳までに3000万円つくる!年代別ポートフォリオモデル』のようだ。30代、40代、50代ごとに、運用開始時の元本、毎月の積立額を基にした日本債券、日本株式、外国債券、外国株式への長期・分散投資のポートフォリオを作成し紹介している。

 ただし、50代になってリスクの少ない投資の場合には日本債券中心、リターンを増やしたい30代には外国投資中心という、投資のセオリー通りのポートフォリオが組まれているだけで目新しさゼロだ。なかでも、50代となると、安定的な投資先として日本債券(国債)が中心となったポートフォリオになっているが、この特集の冒頭では「誤解3 日本市場に投資していれば安全」として、日本の国債が破綻するリスクについて、悪夢のシナリオを紹介していたのではなかったか? ダイヤモンド編集部は、日本国債破綻する派なのかしない派なのか? しかもその破綻の規模・影響は? といったことがしっかりとしていないので特集の足元がおぼつかない。

 しかも、このギリシャ危機に端を発した欧州債務危機再燃、来年以降に予想される日米同時緊縮財政のなか、こんな投資特集を組んで大丈夫なのか!? と思ってしまう。実は、マネー系の記事を多く執筆している筆者には、今回の特集は懐かしささえ覚えるのだ。

 08年のリーマンショック前に、私の周辺ではこうした資産運用の教科書的な本が量産されていた。あの頃は、日本国内も米国経済の好況の下、希望がまだあって、中国もEUも頼もしい存在だった。だが、今は状況が大きく変わり、これまでの分散投資の考え方も激変期を迎えているはずではないか。

 たとえば、日本経済新聞4月25日付17面「分散投資崩れる定石」によれば、00年代半ば以降、グローバル化の進展などで、日本株式の値動きは外国株式や外国債券などとも連動性を強めており、分散投資の効果が低下しているという(連動性がないのは日本債券のみだ)。

 もう少し、取材をしてほしかった点を具体的にいえば、実際に老後はいくらかかるのかという事実だ。今回の特集の「3000万円が必要」という前提も、アンケートで多くの人が「3000万円くらいかかるのではないか」とした回答に基づいたものだ。

 また、公的年金を補完する個人年金保険や日本版401K(確定拠出年金)の運用状況もこれから重要だ。すでに、公的年金だけでなく公的年金を補完する資産運用先がある。個人年金保険や日本版401Kは確定申告で一定額が控除される仕組みすらある(実際に私も運用している)。こうした仕組みの運用状況を調べたら面白いはずなのだが、こういった制度についての話がいっさい出てこない。

「週刊ダイヤモンド」は「2/4号」の特集『さよなら!伝説のソニー』のような企業モノには強いのだが、「5/12号」の特集『その経験はカネに変わる! サラリーマンのらくらく起業術』も物足りない内容だった。個人のライフプラン的なモノはなぜか弱くなる傾向がある。

<空前の採用バブル到来 老後に備えて公務員に転職できるチャンスも!>

 一方、秀逸だったのが、「週刊東洋経済 5/26号」の特集『公務員&政治家になる! 仕事&給与大図鑑』だ。4月末に行われた13年度採用の国家公務員試験では従来のⅠ職(キャリア)に代わって、「総合職」試験が導入された。およそ30年ぶりとなる全面的な試験制度の改定だった。給与削減に大幅な採用減という強烈な逆風が吹く中、申込者は2万3881人(前年度比約13%減)となっている。さらに、地方自治体では団塊世代の定年退職などで空前の採用バブルのさなかにある……といった背景からの大特集となったものだ。最近の橋下徹・大阪市長を先頭にした公務員バッシングなどの世の中の風潮を逆手にとって、「今こそ、公務員に転職できるかも」という切り口で取材・編集をしているのが良い(ライバル誌「週刊ダイヤモンド」は「2011年10/15号」で『おいしい公務員』というバッシング中心の特集を組んでいるが、それとの差別化を図った結果が功を奏したか?)。

 公務員が狙い目という大特集だが、注意したいのは、国家公務員は競争がより激しくなるということだ。というのも、今年の総合職試験は、受験しやすくなったロースクール生(法科大学院生)が多く受験しているため、筆記試験の合格水準が押し上げられると見られているのだ。国家公務員職が、法律系の筆記試験から「経済学」が必修でなくなったことで、事実上飽和状態となっているロースクール生の受け皿になってきそうだ。

 狙い目は採用バブル到来の地方公務員。志望者の鉄則4カ条は①応募者の少ない土木、機械など技術職を狙え! ②事務志望の院生なら、東京都は院生枠と学部生枠の両方で受験ができる。③大阪府・市などでは、筆記試験を軽減・廃止していることもある。④応募年齢の上限は、一般に30歳前後まで。30歳職歴なしでもチャンスがある、というのだ。

 さらに、40代~50代からも公務員になれる、社会人採用も増えている。各自治体が社会人採用に前向きになったのは07年ごろ。90年代後半からの採用枠削減の結果、30代~40代の専門的な知識を持つ人手が必要になったのだ。

 東京都や神奈川県横浜市では、受験資格は「60歳未満職務経験あり」となっており、専門的な知識と職歴を積んで戦略的に対策を練ることで、老後に備えて公務員に転職することも可能なのだ。

 ただし、採用数が少ない。横浜市の11年度社会人採用試験は事務は約26.8倍の高倍率。熊本県の行政職も32倍だったという。やはり十分な戦略が必要になってくるだろう。PART II『公務員しごと図鑑』では、国会図書館職員や防衛省専門職員など公務員の15の職種を紹介している。今の自分の職歴にぴったりの転職先が見つかるかもしれない。

 また、PART IV『公務員給与ランキング』の『全国市区町村年収ランキング1000』で興味深い変動があった。年収上位には常連の芦屋市、多摩市、鎌倉市を抑えて、1位になったのは福島県相馬市の平均年収807.6万円だ。2010年度は645位だったが、平均年収を約200万円上昇させたという。この原因は、東日本大震災後の残業の増加だ。大量の時間外勤務が発生し、月の時間外勤務手当は1人平均18万7874円となったという。同じく被災地の宮城県石巻市や福島県飯舘村、南相馬市も上位にランクインした。それだけ残業代がしっかり出るのも、公務員の魅力だろう。

 なお、フィデリティ退職・投資教育研究所が2011年に公表した『公務員・会社員の比較レポート』によれば、退職金の平均受取額をみると、公務員は約2600万円、会社員は約1700万円、退職後の生活資金準備額(平均値)も公務員631万円、会社員478万円と、公務員は会社員より退職後の生活資金準備も進んでいることがわかる。年金も、公務員には公務員共済年金がある。

「週刊ダイヤモンド」ではないが、老後難民にならないためには公務員への転職というのがベストな選択かもしれない!?
(文=松井克明/FCP)

松井克明/CFP

松井克明/CFP

青森明の星短期大学 子ども福祉未来学科コミュニティ福祉専攻 准教授、行政書士・1級FP技能士/CFP

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