資源高が前3月期に記録的な利益をもたらした。4-6期に減益に転じたのは、鉄鉱石や石炭などの資源価格の下落で利益が落ち込んだことによる。資源価格によって総合商社の業績は大きく左右される。
三菱商事の4-6期の最終利益は、前年同期比15.2%減の981億円。稼ぎ頭の豪州原料炭子会社のストライキの長期化で販売数量が減少した。三井物産は主力の鉄鉱石価格の下落で同21.3%減の1044億円。伊藤忠商事は同24.0%減の706億円、住友商事は同41.7%減の487億円。いずれも資源価格の下落が響いた。
なかでも鉄鉱石のスポット価格は、1トン当たり117ドル。製鉄用に使われる原料炭のスポット価格は同193ドルと前年同期に比べて3割以上下落した。背景にあるのは中国の経済成長の鈍化だ。これまで右肩上がりだった粗鋼生産の勢いが減速したため、原料の需要が減り、需給が緩んでいるのだ。
一方、丸紅4-6月期の最終利益は同8.3%増の524億円と、4-6期としては過去最高を記録した。好調の原因はこれまた資源。2008年に投資したチリの銅鉱山、エスペランサの本格立ち上げが利益に貢献した。
90年代後半、インターネットの普及とともに、仲介(貿易)事業者としての商社の役割は終わったと、“商社不要論”が声高に言われた。だが、総合商社は投資会社に大きく舵を切り大変身を遂げる。リスクを取って戦略分野に投資することによって果実を得る。商社“冬の時代”から“夏の時代”へと転換した。総合商社の復活の原動力になったのが資源への投資だった。
総合商社は00年代後半から資源ビジネスに軸足を移した。原油や鉄鉱石、原料炭、レアメタルなどの資源価格が次々と高騰する現象は07年ごろから顕著になっていたが、10年夏以降、軒並み急騰状態となった。
資源高騰に沸いた12年3月決算では、各社の首脳は内心、「もうけ過ぎ」の批判を恐れていた。三菱商事は最終利益が4538億円、三井物産は過去最高の同4344億円を叩き出し、世界的な景気低迷と円高に苦しむほかの業界を羨ましがらせた。三菱商事が豪州の石炭(原料炭)、三井物産がブラジル鉄鉱石開発にそれぞれ1000億円の巨額投資をしたのは今世紀初頭のこと。「石炭とLNG(液化天然ガス)の(三菱)商事」、「鉄鉱石と原油の(三井)物産」と称され、両社に大きな利益をもたらした。
しかし、資源への依存度が高すぎることを懸念する商社担当のアナリストは少なくなかった。資源価格は変動が大きい。「資源への依存度は3~4割に抑え、インフラ事業など確実に利益の拡大が見込める部門を拡充すべきだ」と指摘されてきた。
だが、儲かるとなれば、“イケイケドンドン”となるのが商社の体質だ。気がついたら資源への依存度が高い収益構造になってしまっていた。なかでも三井物産は極端だ。12年3月期の最終利益4344億円のうち資源・エネルギーの利益は3894億円で、実に9割である。三菱商事は6割台、伊藤忠商事は5割台、丸紅は4割台、住友商事は3割台だ。