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松江哲明の経済ドキュメンタリー・サブカル・ウォッチ!【第6夜】

つらいとすぐ逃げる…『上京物語』で見たゆとり世代就職のリアル

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あのテーマ曲を聞くだけで高揚感が高まる。
(「ザ・ノンフィクションHP」より)

ーー『カンブリア宮殿』『ガイアの夜明け』(共にテレビ東京)『情熱大陸』(TBS)などの経済ドキュメンタリー番組を日夜ウォッチし続けている映画監督・松江哲明氏が、ドキュメンタリー作家の視点で裏読みレビュー!

今回の番組:11月4日放送『ザ・ノンフィクション』(テーマ:20歳の上京者)

 ゆとり世代の人たちに「ゆとりだね」と言うと本気で嫌な顔をされるので、あまり指摘はしたくないのだが、それ以外の単語が思いつかないので、つい言ってしまうことがある。

「そんなことないです!」とか「僕だってがんばってます」と映画の現場で反論されることもあるが、本人ががんばってるかどうかなんてどうでもいいことだ。そんなのは当然のことで、がんばってるかどうかは他人が評価することなのだから。

 逆に「そうなんですよね、ウチらゆとりなんで……」と自虐的になる人もいるが、そこで納得するなよ! とつい声を荒げてしまう。中には(いや、結構な割合で)「じゃあ責任取るんでやめます」と言う人もいるが、そんなの責任取ったことにならない。こうやって、こちらの予想を越えた反応をするのが彼らゆとり世代なのだ……と書いてて、あぁまた「ゆとり」と使ってしまったと反省をする。こうやって口うるさいオヤジになっていくんだろうか。

『ザ・ノンフィクション』で放送された『上京物語 2012~二十歳 夢の分岐点~』は、現在の20歳をゆとりと呼んでいいのか分からないが、精神的に未熟な若者を追ったドキュメンタリーだった。

 これまで放送された『上京物語』シリーズは、厳しい寿司職人の板前修業やバスガイドといった「がんばる」姿を追った物だったが、今回はちょっと違う。なんかこう……「幼い」のだ。それは登場人物の一人、丸谷優司君も渋谷の歩道橋に立ちながら夢を語り、自分のことを「心は高校生」と分析している。

 丸山君の取材は18歳から始まった。雪の積もる秋田の高校に通う彼は「東京は自由なんだ」と同級生に語り、父には「夢に対する思いは強いよ」と言い切る。夢はモデルになること。父は「やれるはずねえべ」と反対をする。だが、夢を信じる彼は揺らがない。父が心配するのは経済だ。夢でメシは食えるのか、と。灯油を入れる父の姿が現実を物語るが、丸山君は直視しない。

 付き合っている彼女にも別れを告げ、上京する。建設現場でバイトをしながら面接に向かう。志望動機を聞かれても「雑誌とかテレビを見て単純にかっこいいと思って……」と番組でまとめられていたが、本心なんだと思う。

 そこから、面接官に「モデルで食べていくのは不可能」とまで断言される。養成学校では講師に「ビシッとしてないんだよね、ビシッと」と指摘され、同級生にも笑われる。そして落ち込む。

 上京する前に調べておくべきことがあったんじゃないのか、丸山君! と注意したくるが、もう遅い。なぜなら僕が見ているこの映像は1年半前の映像で、彼は番組スタッフの前からも姿を消してしまったのだ。

  番組ではもう一人の夢を追う若者が登場する。千葉かおりさんは函館から美容師を目指して上京する。学校では「クラスのマドンナ」「東京に行ってもモテる」と評判が良く、講師でさえ「有名になったらどうしよう」と心配するほどだ。一緒に上京する友人とも「仕事でも何かあったらお互い全部話そうね」と約束し、東京の生活に期待を膨らませる。

 そして僕は心配になる。冒頭でこんな演出をするということは後に悪いことが起こるぞ、と。

 その予感は的中した。

 店に入っても掃除とシャンプーしかさせてもらえず、手は石けんの使い過ぎでボロボロだ。さらに怖い先輩まで登場する。男女関係なく容赦ない。「私より若いんでしょ、ほらやって!」「いそいで~」と文字化するのが不可能な、独特の発音でかおりさんを攻める。「この人、怖い!」と思ったのは僕だけではなかった。かおりさんは完全に萎縮し、涙を流す。