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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(12月第3週)

国民を愚弄するTPP論争 農産品の自由化交渉が始まっている!

TPP自由化の方向性次第では日本もこうなる?(「足成」より)
 毎日の仕事に忙殺されて雑誌を読む間もないビジネスマン必読! 2大週刊経済誌「週刊東洋経済」と「週刊ダイヤモンド」を比べ読み。小難しい特集を裏読みしつつツッコミを入れ、最新の経済動向をピックアップする!

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「週刊ダイヤモンド 12/22号」の特集は『総予測 崖っぷち日本再起動2013』。年末恒例の2013年の各業界を占う特集だが、多くの専門家にインタビュー、もしくは執筆依頼し、今後のキーワードを満載にすればよし、というラクな特集だ。編集部が会いたいがためだけにオファーをしたような女優・壇蜜インタビューも掲載されているが、「日経エンタテインメント」か! とつっこみたくなるほどの内容の薄さだ。

 しかも、『特集2』は『学者・エコノミストが厳選! 2012年「ベスト経済書」』というこれまた編集部の休暇時の定番特集だ。

『総予測 崖っぷち日本再起動2013』を簡単に紹介すると、『予測6 電機 シャープを死の縁に追いやった液晶テレビに「撤退」の足音』という記事によれば、13年は競争力を失った家電メーカーのテレビ撤退が囁かれており、とくに8年連続でテレビ事業が赤字のソニーはテレビ事業を切り離すスキームが表面化する可能性が高いという。

 また、自動車業界ではディーゼル市場が急伸しそうだ。欧州やインドでは主流になっているディーゼル車だが、日本では、99年、石原都政で大気汚染の元凶としてディーゼル規制が行なわれたが、その後、自動車メーカーの技術革新から、12年はディーゼル元年といわれるまでに復活。その代表がマツダのSUV(スポーツ用多目的車)で快進撃を続ける「CX-5」のディーゼルエンジンタイプだ(『予測7 自動車 投資抑制狙いの協業が加速 台風の目はスズキ、マツダ』)。

 また、iPhoneを発売しておらず12年に失速したドコモがどう出るか? 民主党政権と密接な関係になって再生したJALは自民党政権下でどう動くか? 最大の注目は副総裁人事が3月に、総裁人事が4月に行なわれる日銀総裁人事はどうなるか? だろうか。

 26日に誕生する安倍・自民党政権にとっては、待ったなしの財政再建、社会保障改革、原発再稼動問題、東電再生計画……と国内だけでも来夏の参議院選挙に影響を与えかねない問題が山積みだ。

●すりかわった衆議院議員選挙の争点

 13年はTPP(環太平洋経済連携協定)問題も結論を出さないといけない。13年末までにはすでに11カ国で進められている交渉が合意になりそうだからだ。日本は正式な参加表明のうえに、自民党政権が総選挙の公約で示したように「国益」が守られるかどうかの判断もしなくてはいけないのだ。農産品の自由化となれば、自民党政権の票田である農家の死活問題にかかわるために、混乱は必至だ。

 ところが、すでに農産品の自由化の交渉は進んでいるというのだ。 『予測22 TPP 13年半ばに内容が固まる 残された時間は少ない』という記事では、米国がTPPを促進しようとする動きの背景を紹介しているのだが、これが驚くべき内容なのだ。

 TPPを推進してきたのは日本の市場をさらに開放させ輸出を増やしたい米国・オバマ大統領。かねてから米国の輸出倍増計画を掲げているオバマ大統領が先の大統領選で再選しただけに、今後米国から日本のTPP参加をより強く働きかける動きが見込まれる……というのがこれまでのニュースの解説だったが、今回の記事によればASEAN(東南アジア諸国連合)が15年までに「政治・安全保障共同体」、「経済共同体」、「社会・文化共同体」の3本柱から成る「ASEAN共同体」の実現を目指している。その過程で、日中韓印豪ニュージーランドとASEANからなる包括的経済連携構想(RCEP)が浮上し、15年末までも交渉完了を目指し、今年11月より交渉が開始しているという。こうした東アジア圏での自由貿易のまとまりに対し、米国は警戒し、TPPを先行させようとしている……というのが米国の狙いなのだ。

 しかも、このRCEPでも95%の自由化率を目標にしている。TPPと同様の農産品自由化が行なわれかねない。つまり、TPPと同様のRCEPの交渉がすでに始まっているということだ……記事ではここまでしか書かれていないが、あまりにも驚くべき内容だ。

 というのも先週までの総選挙ではTPPも主要な争点とされていた。TPPに参加することで日本経済のさらなる成長を可能にする一方で農産品などの自由化がされてしまう……、この是非を政党間で争い、マスコミも議論をしてきたのではなかったか。ところがすでに、RCEPの形で農産品の自由化交渉は始まっているというのだ。これでは、なんのための総選挙だったのか!?

 TPPとRCEPの大きな違いは、中国か米国かどちらが入っているかだ。だとすれば、総選挙では「農業を守るか」vs「農業を犠牲にして経済成長をするか」という争点ではなく「自由貿易の中にアメリカをいれるか(TPP)」vs「自由貿易を東アジア中心に行なうか(中国を含む RCEP)」という争点で議論されるべきものだったのだ。つまり、今後の長期的なスタンスとしてアメリカやアジアとの距離をどう保つかという問題だ。

 ところが、政治家もマスコミも、そして国民も不勉強で、すでに自由貿易の協議が始まっているにもかかわらず、目先のTPPのことしか目に入らずに、「自由貿易 YESかNOか」という的外れな議論を繰り広げていたのが12年の総選挙だったということになる。政治家とマスコミが総選挙で右往左往している間、このRCEPの交渉を粛々と進めているのが霞ヶ関だ。官僚たちが敷かれたレールの上ですでに交渉を進めているのだ。脱官僚支配などが争われていた総選挙がむなしくなるほどだ。

 政治家もマスコミも政局や選挙にばかり一喜一憂している間に、官僚は政策を進めている。こうした状況では政治家もマスコミも、官僚に立ち向かえる知識も経験もない。

 こうして公務員大国は続く。『予測54 マンション いよいよ新築物件が動き出す 堅実な“公務員タイプ”が人気』記事によれば、マンション市場は回復基調にある。幅広く動き出した理由は「公務員が動き出したため」ではないかという。全国のマンション販売現場を回ると、購入者の公務員比率が高い。購入者の3割以上は公務員が占めているという印象もあるという。この背景には低家賃の公務員宿舎が減少し始めたこと、また住宅ローンが組みやすいことがあるという。なお「公務員タイプ」とは、駅に近く、価格に割安感があり、住戸は十分は広さで設備仕様のランクが高いという堅実なタイプを指すという。

 マスコミと政治家が年末年始に休んでいる間も、官僚は常に自己の権限を守るべく、次の一手を打っているのだろう。
(文=松井克明/CFP)

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BusinessJournal編集部

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