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パナソニック、プラズマ撤退、BtoB事業シフトという“過去との決別”の行方

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パナソニック本社(「wikipedia」より/Pokarin)
 日本企業の経営の失敗を考える上で重要なことは、次の2点である。

(1)後継社長が先代社長に遠慮して、なぜ経営に失敗したのか、失敗の本質を徹底的に解明してその教訓を次の経営に生かそうとしない。
(2)万一の失敗や不測の事態まで想定してその対応策を準備する「コンティンジェンシ-・プラン」が経営戦略の立案や大型投資計画の段階で考慮されず、楽観的な見通しや主観的な期待に導かれた経営戦略に終始してしまうことである。パナソニックのプラズマディスプレイ(尼崎工場)、シャ-プの液晶パネル(堺工場)の大型投資は、コンティンジェンシ-・プランの欠如が招いた経営の失敗である。

 パナソニックの今日の凋落を招いた直接の原因は、5000億円以上の巨額資金を投入したプラズマテレビ、プラズマディスプレイの大型投資に失敗したことにある。同社はプラズマを、液晶より高画質でブラウン管に代わる次世代テレビの本命として位置づけたが、プラズマは液晶に高画質化や大画面化で追い上げられ、画質・大画面・価格のどの点でも競争優位を失った。2004年~09年にかけて「液晶優位、プラズマ不利」の流れが明確になると、ライバルメ-カ-のソニ-、日立製作所、パイオニアなどは相次いでプラズマ生産から撤退した。09年以降、日本でプラズマディスプレイパネルを生産しているのは、パナソニックのみであった。

 こうした市場動向の大きな変化、業界の動き、技術動向に、当時の中村邦夫社長(現相談役)をはじめパナソニックの経営陣は気づかなかったはずはない。実際、06年頃にはすでにパナソニック社内からも市場動向に敏感な営業部門を中心に、「プラズマが生き残るのは厳しい。早急にテレビ戦略を見直して軌道修正すべきだ。そうしないと、大変なことになる」と指摘する多くの意見が出されていた。それにもかかわらず、これら現場の声は経営陣に届いていなかったのか、経営戦略の抜本的な見直しもなされなかった。

(1)当時中村社長は、02年に4000億円を超える赤字経営に転落した同社をV字回復させた男として評価され、“中村天皇”といわれるほどの独裁的な権勢を振るっていたため、経営会議で彼が推進するプラズマテレビ戦略を否定したり、疑問視する意見を言える雰囲気ではとてもなかったという。

(2)そのため、市場動向の客観的なデ-タの裏づけのない楽観的な見通しや主観的な期待に基づくプラズマディスプレイ戦略が立案され、06年からライバルメーカーのプラズマ撤退が相次いだにもかかわらず、抜本的な厳しい見直し・変更は一度も行われなかった。

(3)当時、パナソニックが巨額な大型投資に対するチェックが甘かった要因として、「松下銀行」といわれるほどの1兆5000億円にのぼる余裕資金があったことだ。このため、市場動向の冷静な分析や厳しい投資チェックを欠いた。07年に1兆5000億円あった余裕資金は、この5年間で2兆5000億円も減り、今や1兆円を超える借金を抱える赤字会社に転落した。

 テレビ市場全体の1割にも満たない市場規模にまで縮小したプラズマテレビから早急に撤退することが一刻も早く求められたが、中村社長時代の否定につながるからか、プラズマテレビからの撤退が経営会議で諮られることもなく、その後も赤字を垂れ流しながら続いていった。そして13年、津賀一宏新社長になって、やっと撤退を決断したのである。

●経営責任が問われない経営

 このことは、以前からいわれていた「同社は経営陣に対するコ-ポレ-トガバナンスが弱く、経営トップの経営責任が厳しく問われない経営体質だ」との指摘を証明するものだ。本来なら、経営の失敗が明確になった段階で、当時後継社長となった大坪文雄社長が中村前社長の経営を厳しく検証し、その責任を明確にすべきであった。しかし、中村前社長から社長指名を受けた恩もあってか、大坪社長は前社長の経営責任をまったく問題にしなかった。こうした無責任で、微温的な経営体質が、パナソニック凋落の最大の要因かもしれない。加えて、中村元社長がいまだに相談役に就いている点も問題であろう。

 中村社長時代のパナソニックのプラズマ大型投資(尼崎工場)、シャープの片山幹雄社長時代の液晶大型投資(堺工場)は、冒頭で述べたコンティンジェンシ-・プランが欠如している典型事例である。万一失敗した場合には工場閉鎖・事業撤退にとどまらず、一気に会社倒産の危機にまで転落してしまう。欧米の優良企業は、事業計画や大型投資の立案に際して想定外の不測の事態や万が一の失敗を想定したコンティンジェンシ-・プランを必ず織り込んだ経営・投資計画を考える。