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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第33回

あの新聞界のドンと社長の不倫スキャンダルが、大手新聞合併の妨げに!? 

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「Thinkstock」より

【前回までのあらすじ】--巨大新聞社・大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に、以前から合併の話を持ちかけていた。そして基本合意目前の段階にまで来たある日、割烹「美松」で、村尾、両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)、小山成雄(日亜)との密談が行われ、終了後、松野と村尾はそれぞれの愛人の元へ帰っていった。そして数日後、4人による第2回目の会談が行われた--。

「おい、村尾君、何を確認しようというんだ? まさか、合併のことで、まだ何か意見のすり合わせしなきゃならんことでもあるのか?」

 大都新聞社長の松野弥介は浮かした腰を元に戻し、座り直すと、不愉快そうに日亜新聞社長の村尾倫郎に質した。

「先輩、誤解しないでください。合併のことじゃありませんよ。後はこの2人が合併後に出す新媒体構想を詰めれば、発表という段取りで進めることに異論などありません」

 村尾が大都取締役編集局長の北川常夫、日亜取締役編集局長の小山成雄の2人を交々見ながら、遜った調子で答えた。

「じゃあ、なんなんだよ」

「それはですね。情報管理のことです。発表の直前はともかく、それまでは情報漏れがないように徹底することを再確認しておきたいと思ったんです」

「なんだ。そんなことか。言わずもがなのことだろう。合併の話し合いをしているのはこの4人だけだ。それ以外の連中に情報が漏れるわけがないじゃないか。うちの北川にも、君のところの小山君にも新媒体構想の詰めは部下を使わず2人だけでやれ、と指示しているんだぞ。それも君と打ち合わせしてやっている。そんなこと、君だってわかっているだろ?」

「それはそうですけど、念には念を入れておいたほうがいいと思ったんです」

「おい、村尾! どういうつもりだ。俺と、うちの北川が信用できないとでも言いたいのか。え、それじゃ……」

 むっとした松野が目を剥くと、村尾は慌てて遮った。

「先輩、そんなこと言っていません。もう少し話を聞いてください。うちと先輩のところの合併は国民新聞の神経を逆なでする戦略です。国民新聞は先輩の大都新聞を抜いて部数トップに躍り出ようという時ですから。それがうちとの合併で、国民は万年2位の座に甘んじるほかなくなるんです。もし、事前に情報漏れすれば、国民新聞がどんな手を使って巻き返しに出てくるか、わかりません。だから、今日も別れる前に我々4人で、もう一度、発表まで外には絶対漏らさない、ということを再確認していこう、と思っただけなんですよ」

「ふむ」

 村尾の説明に松野もとりあえず矛を収めたが、まだ納得できない様子で続けた。