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PFIは誰のためのものか?

安倍成長戦略・空港民営化の課題と今後 成功するのは1割程度か…試金石の関空

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仙台空港、2007年7月19日撮影(撮影:BehBeh「Wikipedia」より)
 安倍晋三首相の成長戦略第3弾として民間資金を活用した社会資本の整備、いわゆるPFIの推進が盛り込まれた。企業が資金の出し手となる従来のPFI(※)から一歩踏み込み、インフラの運営を民間に委ねる“コンセッション”という新しい方式を全国に広めていく。しかし、経済成長と財政健全化の“いいとこ取り”を狙うこの施策からは、“利用者の利益”という視点が欠落しているように思えてならない。

 4月の産業競争力会議で竹中平蔵・慶大教授がコンセッションの普及を訴えた。インフラの所有権を国や自治体が保有したまま運営権を民間に売却する「公有民営」の考え方である。

 政府はPFIの事業規模を、今後10年間で現在の2.5倍の12兆円に拡大する。行動計画をまとめ、法改正や国際戦略特区の活用を進める。

 具体策としては、仙台空港や大阪国際空港・関西国際空港で空港の運営権を民間に売却する。国土交通省は今国会に、国が管理する空港の運営権を民間に売却できるようにする「民活空港運営法」を提出し、6月19日に自民、公明、民主各党の賛成多数で成立した。有料道路も民間に運営委託できるようにする方針だが、国交省は高速道路の運営権の売却については、前向きとはいえない。

 地方空港の民営化第1号は仙台空港になりそうだ。宮城県の村井嘉浩知事が、仙台空港を全国の第1号にするよう国に求める。今後、国交省と運営企業の選定に入る。村井知事は「100%民間会社による運営」を掲げている。宮城県が立ち上げた検討会には三菱商事、三井不動産、東日本旅客鉄道(JR東日本)や物流会社、銀行が名前を連ねた。全国の空港の運営が順次開放されるのをにらみ、いち早くノウハウを蓄積したいと考える企業が増えている。

 仙台のほか広島、高松、静岡空港などが民営化を検討しており、「民活空港運営法」が成立したことで、空港の民営化は、さらに広がりを見せるだろう。

 民営化されれば、着陸料や空港ビルのテナントの賃料などを企業が決める。国が管理する空港の着陸料はどこも同じだが、民営化して引き下げれば、格安航空会社(LCC)を呼び込むこともできる。その結果、利用客が増え、飲食店などテナントの収益が上がれば、これこそ“三方一両得”だが、安倍政権の成長戦略には利用者(消費者)の視点が欠けているのも、また確かだ。

 ただし、民間企業が入って活性化する空港は、97空港のうちの1割程度とみられている。成田、中部、関西、大阪を除く93空港は国や自治体が管理しているが、かつて自民党の運輸族(航空族ともいう)は利用者の予測を大甘に見積もり、自分の選挙区に空港を作ってきた。

 例えば、コンセッション第1号になるとみられている仙台空港と山形空港は、高速道路を使えば1時間半しか離れていない。仙台空港からLCCを利用すれば山形空港から飛ぶ費用の半額になる。民営化された空港同士の競争も激しくなり、民営化空港に弾き飛ばされる地方空港も出てきそうだ。空港ごとの財務状況をきちんと情報公開して、採算が取れない空港の早期の閉鎖や廃止を促進することが重要だ。

●関空は運営権を売っても負債は完済できない

 新関西国際空港会社が検討している、運営権の売却の概要が明らかになった。国内外の民間企業や投資ファンドを対象に年内に募集を始め、年明けに1次入札を実施する。資金の調達額は6000~8000億円程度になる。主要空港の運営権の売却では、関空がその先駆けとなる。新関空会社は関西国際空港と大阪国際空港を運営する権利を売却して1兆2000億円の負債の返済に充てるが、これだけでは足りない。運営期間を40~45年に設定するので、今回、権利を売却する運営期間がすぎたら、もう一度、運営権を売却する“二重売り”を考えているようだ。役人は二段構えと言うが、どう見ても“二重売り”だ。一度の権利の売却で借金を返せないのなら、あえて民間に権利を譲渡する必要があるのだろうか。新関空会社は政令により2060年までに全ての負債を返済しなければならない。だから焦り始めたのだろうが、今回の運営権の売却だけでは負債の完済はできない。どこか変だ。負債を完済できるような方法を考えるべきなのではないのか。