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日立、V字回復宣言でも、先行する海外競合勢との埋まらぬ差…“ガラパゴス的”新中計

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日立製作所本社が所在する日本生命丸の内ビル(「Wikipedia」より/Kakidai)

 2012年度決算の最終損益において、2期連続で7000億円を超える赤字を出したパナソニック、赤字幅が5000億円超に拡大したシャープ、730億円の赤字を出した富士通などの電機業界だが、その中で一人気を吐いている大手が日立製作所だ。

 今、メディアでは「勝ち組日立」「製造業復活のモデルケース」と礼賛されている。例えば、『週刊東洋経済』(東洋経済新報社/2月2日号)は「消沈の電機業界は日立のV字回復に学べ!」という特集を組んでいる。

 5月16日、その日立は「2015中期経営計画」と題する新中計を発表、15年度に売上高10兆円、営業利益率7%超、最終利益3500億円超の数値目標を明らかにした。

 また、新中計ではサービス事業の強化とイノベーションを実現する「イノベーション」、社会イノベーション事業をグローバルに提供する「グローバル」、業務のグローバル標準化と変化に迅速対応できる経営基盤を確立する「トランスフォーメーション」の3項目を、向こう3年間の経営基本方針に定めた。

 そして、同社がこの数値目標達成の牽引車に据えたのが「グローバル化」だ。このため、12年度実績で41%だった海外売上高比率を15年度に50%に引き上げるとともに、海外人員数を12年度比27%増の15万人に増員する目標も打ち出している。

 中西宏明社長は新中計の記者発表会で「赤字からのリカバリーで走ってきたが、成果が上がった」と強調、今年度からは「リカバリーからグロース(成長)への経営を目指す」と、自ら業績V字回復を高らかに宣言した。

 さらに、自社のこれからの立ち位置を「グローバルメジャープレーヤー」と明言、「国内で勝てるメーカーから、世界で勝てるメーカーを目指す」との考え方を示した。

 しかし、業界関係者の中には「中西社長のV字回復宣言は少々自信過剰。収益力のみならず、財務体質改善も道半ば。『V字回復途上』が的確な認識だろう」と、「日立の復活」を疑問視する向きが少なくない。

 グローバルメジャープレーヤー発言についても、社内から「その態勢が整っていない」との声も上がっている。

 「中西改革」と呼ばれる同社の体質改善は、中西社長の自信通り進んでいるのだろうか?

●市況に翻弄された20年間

 過去約20年の日立の業績推移(連結)を概観すると、同社のV字回復はかなり不安定な様子が見て取れる。

 同社の業績は1990年度以降、ほぼ低下傾向にあったが、それが顕著になったのは2000年度以降の10年間だったといえる。

 90年代の場合、96年度から同社の業績が急激に悪化している。同年度の売上高は4.9%の増収を確保したものの、営業利益は10.6%、最終利益は37.7%といずれも前期比減になっている。これは半導体メモリの価格急落が主因とされている。

 97年度は業績がさらに悪化する。同年度の売上高は前期比1.2%減にとどまったが、営業利益は前期比29.7%減、最終利益は同96.1%減で、最終利益は赤字寸前まで行っている。これは前年度に続く半導体メモリの価格下落に加え、冷夏によるエアコン不振、816億円に上る半導体製造装置の減損費計上などが主因とされている。

 そして98年度に赤字転落。同年度の営業利益は341億円の赤字、最終利益は3387億円の巨額赤字と、惨憺たる決算だった。

 半導体メモリの価格下落の影響による情報・エレクトロニクス部門の営業損失903億円計上、リストラ費1325億円計上、1万人近い人員整理に伴う特別退職金717億円計上などが響いた。また、同年度のリストラで、多くの優秀な技術者が同社を去ったともいわれている。

 同社にとって、2000年代は90年代をしのぐ厳しい時代となった。

 最終利益は01年と06-09年度の4年間の合計5年間にわたって赤字に転落したほか、それ以外も00年度と10年度を除くと辛うじて黒字を確保したにすぎなかった。

 特に06年度は、国内外の経済が堅調に推移したにもかかわらず、同社の業績は低迷した。前期比2.2倍増の営業利益を確保した電子デバイスなど好調な部門があった一方で、情報・通信システム、電力・産業システムなどの主力部門が、価格下落や原材料費高騰の影響でいずれも営業赤字に沈んだ。