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「ダイヤモンド」vs.「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(7月第4週)

競争激化するソーシャルゲーム業界の舞台裏〜失速するグリー、独自路線で参入の任天堂…

競争激化するソーシャルゲーム業界の舞台裏〜失速するグリー、独自路線で参入の任天堂…の画像1パズル&ドラゴンズ(「ガンホー・オンライン・エンターテイメント HP」より)
 「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/7月27日号)は、『主役交代 ゲームウォーズ』という特集を組んでいる。

 「ゲーム業界における『ゲームのルール』が変わりつつある。クラウドをはじめとするネットワーク環境の整備、スマートフォンやタブレットといった情報端末の技術革新と急速な普及、ソーシャルメディアの浸透によるコミュニケーションの変化と、遊びの概念の広がり……。あらゆる要素が一気に押し寄せているためだ。この波に乗って成長を遂げる新興勢力と、任天堂、ソニー・コンピュータエンタテインメントといった老舗企業の間で、熾烈な戦いが繰り広げられている」ゲーム業界に迫った特集だ。

 火付け役は、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(ガンホー)のスマートフォン(スマホ)向けゲームアプリ「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」だ。ガンホーは、2013年度第1四半期の売上高が前年同期比800%超、営業利益7000%超と、驚異的な飛躍を遂げ、新興企業向け株式流通市場JASDAQにおける同社の株価は上昇し、5月14日に年初来高値の163万3000円をつけた。

 時価総額は1兆8807億円に達し、ソーシャルゲームのグリー、DeNAを抜き去り、任天堂をも超えた。パズドラはダウンロード数が1600万件を突破し、スマホ保有者(国内4500万人)の3人に1人、約1400万人が遊ぶゲームとなった。

 ゲーム業界の最大手でゲーム端末機中心の任天堂は2期連続の赤字に苦しみ、タッチ式ディスプレーでプレーするスマホ向けゲームのガンホーに追い風が吹く、時代の転換点を迎えたようだ。

●ゲーム業界の盛衰

 さらに、これまでの主役だったソーシャルゲームも、生き残り競争が始まっている。コンプガチャによる未成年への過剰課金が社会問題化し、さらに、スマホの普及により、グリーやDeNAといったプラットフォームを通さずに、直接ゲームアプリを選べるようになったためだ。

 7月、欧州で大型タイトルの提供目前にもかかわらず、ロンドン事務所を閉鎖したグリーは、13年4~6月の営業利益の数値が52億円と、前年同期比で7割も減少する見込みだという。利益が急減中なのだ。これまでのソーシャルゲームの開発費は数千万円で済んでいたが、ゲーム性を高める志向が強まり、現在は億単位にまで高騰している。さらに、従来以上のプロモーション費用がかかるようになった。売上高に占める販売管理費は、全体の50%に迫る勢いで増え続けているのだ。このロンドン事務所閉鎖に伴い、日本人社員は全員帰国、外国人は解雇するという出版不況を想起させる厳しい状況だ(特集記事「DeNA、グリー ソーシャルゲームは一服 明暗分かれる2社の差」より)。

 ゲームの質も変化している。従来のようなパッケージソフトを売って終わりではない。プレーヤー同士がネットワークでつながって、コミュニケーションそのものを楽しむソーシャル性の高いゲームが多く、ネットワーク接続が前提で、売った後も収益を上げることができるようになった。2期連続赤字ながら財務内容は健全な任天堂は、年内にもF2P(フリートゥプレー=基本プレーは無料だが、有利にゲームを進めるためには有料アイテムを購入する必要があるというモデル)に参入する。開発費は、既存のゲームソフトの半分とも10分の1ともいわれ、参入が容易なうえに、運営次第では莫大な利益が出せるのだ(特集記事「任天堂 2期連続で営業赤字 “自分流”で挑む対スマホ戦」より)。

 かつては、プレイステーションで栄華をきわめたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、なんとか黒字を確保するものの、プレイステーションというハード自体が衰退期に入っている。

 つまり、ゲーム業界はスマホによる新しい潮流のなかで、泳ぎ方を間違えたグリーの代わりにパズドラのガンホーが先頭を泳ぎ、大鯨・任天堂が独自路線でソーシャルゲームに打って出るというのが現在の構図だ。

 読者にとって知っておきたい記事は「個人開発アプリ 採算より熱意で突き進む! 高コストの企業に新たな脅威」だ。スマホの台頭は「個人のアプリ開発者」という新しい勢力を生み出している。失敗が許されない企業プログラマに比べて、採算度外視の個人開発者は、新たな脅威になりつつあるのだ。

●個人開発で月収100万円

 120万ダウンロードで話題になったのは、「ぐんまのやぼう」というシミュレーションゲーム。このアプリは、おネギ、コンニャクといった群馬県のを収穫し、ゲーム内通貨をためる。このためた通貨で日本全国や世界、果ては宇宙まで全てを「群馬県」にしてしまう内容だ。この「ぐんまのやぼう」は個人開発者の作品。この開発者は「ふとした思いつきレベルでも、とにかく出す」ことで、110タイトルを出しているという(現在は会社組織化)。たくさんアプリを出し、長く遊ばれれば十分に稼げる。月収100万円を超えることも多いという。

 電車内での移動中にゲームアプリに夢中になっているビジネスパーソンは、その時間にアプリ開発のスキルを独学で身につけたほうがいいかもしれない。

●パズドラのヒットに迫る

 なお、パズドラのヒットの理由に関しては、「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/6月22日号)の第2特集の「パズドラの破壊力」が詳しい。経営トップ・森下一喜社長と開発責任者・山本大介プロデューサー、パズドラを猛烈にプッシュしたiPhone向けアプリ紹介サイト「アップバンク」の“マックスむらい”こと村井智建CEO、そしてガンホーの58.5%の株式を保有する親会社ソフトバンク孫泰蔵会長らのインタビューが掲載されている。この4月末よりソフトバンクの連結対象となったガンホーの、複雑な利益のかさ上げスキームにも迫っている。

 上記パズドラに関する特集を、当コーナー「パズドラ、ヒットの秘密…岐路に立つガチャ頼みのグリーとDeNA~ゲームの転換点か」という記事にまとめているので、ご一読いただきたい。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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