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燃料電池車、実用化に向け加速する自動車業界の舞台裏〜トヨタ・ホンダ先行、日産の誤算

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燃料電池車、実用化に向け加速する自動車業界の舞台裏〜トヨタ・ホンダ先行、日産の誤算の画像1日産自動車のリーフ(「Wikipedia」より/CEFICEFI)
 ホンダは米GMと燃料電池車(FCV)の開発で提携した。FCVの実用化に向けて、世界の自動車メーカーの合従連衡が一気に進んだ。

 ホンダとGMは燃料電池関連の特許出願数で世界トップクラスを誇り、強力なタッグチームといえよう。GMは電池の化学反応の分野、ホンダは電池のコンパクトな設計などで強みを発揮している。

 ホンダは2015年に発売する燃料電池車に、提携したGMの技術を生かす意向であり、20年ごろを目処に燃料電池システムを共同開発すると発表したが、単独で開発を進めていた15年発売の車両にGMの技術を盛り込む。

 これで世界の燃料電池車の開発グループは3つに分かれた。トヨタは独BMWに基幹技術を提供し、15年に500万円程度でFCVを売り出す計画だ。

 FCVをめぐっては、トヨタとホンダの日本勢が先行している。日産自動車は独ダイムラー、米フォード・モーターと提携。3社で共通システムを開発し、17年を目処に量産車を発売する。FCVは水素を燃料にした電気で動く車だ。走行時にCO2(二酸化炭素)を排出しない。1回の水素ガスの充填で500キロメートル以上と、ガソリン車並みの走行距離を確保できるのが強みだ。走行距離でもEV(電気自動車)より、数段優れている。

 EVは比較的簡単な技術で、動力源の電池とモーターがあれば生産可能。一方、FCVは高度な技術が必要で、日本が得意とする“すり合わせ能力”をフルに生かせる。経済産業省も「FCVで世界をリードしたい」として、FCVに注力する。

 FCVの心臓部である発電機は、特許の出願数も膨大で、新規参入組のベンチャー企業には高い壁がある。安倍政権はFCVの燃料になる水素を供給する水素ステーションをガソリンスタンドに併設できるようにするため、規制の見直しに着手した。1基6億円かかるとされる液化水素スタンドの建設は、民間事業としては採算が悪く、国家戦略として取り組む必要がある。

 6月27日に開催された国連欧州経済委員会「自動車基準調和世界フォーラム」で、FCVの安全基準については日本案をベースにすることが採択された。日本政府と自動車メーカーは、15年の実用化に向けて本格的に動きだす。

 そこで重要となってくるのが、水素をどうやって生産するのかという点だ。太陽エネルギーを活用して水から水素を生成する方法だと、生産コストがかからないから理想的だ。太陽電池のパワーアップという技術進歩も、同時並行的に進めなければならない。

 FCVの軽量化を実現するためには、炭素繊維を使用した水素タンクが必要になる。炭素繊維メーカーとの共同研究にも目配りが必要だろう。

●EV誤算で厳しい日産

 EVのリーディングカンパニー、日産自動車は厳しい局面にある。

 17年3月までに仏ルノーと合わせて累計150万台を世界市場で売る大目標を掲げてきたが、この目標を事実上撤回した。カルロス・ゴーン社長は今年1月の北米国際自動車ショーで電気自動車の販売台数について質問され、「失望している」と語った。

 13年7月までの累計販売台数は、日産・ルノーの合計でおよそ10万台だ。日産のEV「リーフ」が7万1000台、ルノーはEV4車種を投入しているが販売実績は約3万台。日産は4月から「リーフ」の販売価格を一律28万円引き下げたが、販売が持ち直す兆しは見られない。世界の累計販売台数が10万台というのは、想定外の少ない数字だ。

 米のシェールガス革命でガソリン価格の先高感が薄れ、EV車の充電器などのインフラの普及も遅れている。現在国内で4700基の充電器を、14年秋までに1万2000基に増やす計画があるが、まだまだ手薄だ。

 日産も独ダイムラーなどとの提携をテコに、FCVの開発に力を入れ始めた。今の技術ではEV車のコストは劇的には下がらない。日産を除く大手の自動車メーカーがEV車よりFCVを普及させたいと考えているのは、EVは生産が容易で参入障壁が低いため、FCVであれば既存のメーカーは優位的立場を保つことができるからだ。

 日産自動車はハイブリッド(HV)車で出遅れたため、EVに特化した。そのEVが今、苦境に立たされている。

 そして日本政府は、FCV推進に大きくカジを切り、EV、PHV(プラグインハイブリッド車)への支援を打ち切る。トヨタはPHVに力を入れているが、HVが売れているので、PHVが減速してもダメージは小さくて済む。一方、EVを次世代エコカーの軸に据えている日産自動車の今後の動向に、自動車業界の注目が集まっている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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