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知ってるようで知らない……薬局の歩き方・クスリの選び方 第14回

ノンシリコンシャンプーは安物成分でぼったくり?シリコン悪玉論、無添加礼賛のウソ

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   数社のノンシリコン商品の成分欄を精査したところ、ノンシリコンを謳う商品には、ラウレス硫酸○○○やラウリル硫酸○○○、もしくは○○○スルホン酸ナトリウムというものが、だいたい筆頭成分として書かれています。これらは代表的な石油系合成界面活性成分で、食器用洗剤にもよく使われている、非常に安い界面活性剤です。他の棚に並んでいる安い製品と何ら変わらないものが使われているのです。

 「石油系界面活性剤だから悪いというのは極論です」と前回お話しした通り、別段悪いシロモノではありませんが、女性なら25歳、男性なら30歳を超えた皮脂の分泌力の弱まった頭皮には、少々脱脂力が強すぎることが多く、長期の必要には注意が必要です。

 そして、いくつかの成分の後、コカミドプロピルベタインやエデト酸、コカミドMEAやコカミドDEAが含まれているのが特徴としてあるようです。コカミドプロピルベタインは、ヤシ油などが原料の界面活性剤です。アミノ酸系ではありませんが、低刺激で発泡性もよく、優秀な成分ですが、やや高額です。一部アミノ酸系シャンプーにも使われることもあります。これらの成分が、先述の界面活性剤の強すぎる作用をマイルドにしてくれるなどの働きをしてくれるならよいのですが、残念ながら明らかに添加量の少ないはずの植物の抽出エキスより順番が下なので、シャンプーの主成分というよりも液に適度な粘性を持たせるために使われていると思われます。なんとも拍子抜けです。

 あとは、ひまし油やコーン油などの植物油や、クエン酸やサリチル酸などを入れて洗い上がりのキシキシした感じを緩和するくらいで、これまた安い他の製品と変わりません。

 ちなみに、植物エキスの効果は、正直なんともいえず、人によっては体質に合うかどうかわからないので、試してみるしかない…といったところです。

 さて、こんな恥ずかしい成分表を晒しておきながら、パッケージに「天然由来の界面活性剤配合」だの「天然植物エキス配合」だのと好き勝手に書いて、他の商品とは違うんですといわんばかりの高価格設定(平均的シャンプーの倍以上)。しかし、主成分は、安物となんら変わらないだけに苦しい売り文句です。商品開発の現場の科学者も、会社の方針とはいえ、なかなかに微妙な気持ちでつくっているのではないでしょうか。

●無添加という魔法の言葉

 さらに、近年増えてきている謎の売り文句の「無添加」ですが、こちらはノンシリコン以上にオカルトめいた存在です。そもそも何が無添加なのかによって話が全く異なります。

 一般的に消費者は、無添加というくらいなんだから、全て天然由来でつくられていて、防腐剤とか体に悪いものが一切入っていない、体に良い商品に違いない、と思うかもしれませんが、そもそも完全に自然からの抽出物で商品をつくったら、おそらく1本当たり1万円を下ることはないでしょう。

 しかも、もっと根本的な話をすれば、「天然は安全、合成は危険」といっているようなものですが、果たしてそうなのでしょうか? 森にひっそりと生えるドクツルタケは食べると死にますし、可憐なスズランやヒガンバナだって毒があります。一方、石油由来の精製パラフィンは、鉱物油、ミネラルオイルといわれますが、あらゆる口紅はもちろん、傷口に塗る軟膏の基剤としても普通に使われています。

 天然だから体に優しいというのは全く根拠がなく、詐欺師が「安全だよ」「大丈夫だよ」をしきりに連呼するのに近い狂気を感じます。合成だろうが天然だろうが、毒にも薬にも無害無益にもなり得る。とどのつまり、関係はありません。

 言い方を変えれば、アミノ酸系シャンプーも石油系界面活性剤もシリコンでさえも、元をたどればすべて地球由来の天然素材からスタートしています。石油だって「1億年の時をかけて磨かれた天然の石のしずく」とでも言えましょうか。そんなの詭弁だといわれかねませんが、そんな詭弁級のでまかせがまかり通っているのが、天然信奉です。

 さて、話がずれてしまいましたが、無添加という言葉は「何が」無添加なのかを見る基準でしかありません。

 界面活性剤は天然には存在しません。サポニンやレシチン、カゼインといった乳化成分はないわけではありませんが、洗浄作用はありません。故に、シャンプーでは合成界面活性成分が必須となります。

 中には、合成界面活性剤無添加、旧法定指定成分無添加、合成香料無添加のものが、異様な高額で売られていたりします。だいたいそのような商品のWEBサイトには成分表示がなく、実際の商品を見てみると、セッケン水に流動パラフィン(指定成分ではないので表示義務はない)を混ぜたものという、確かに旧法定指定成分無添加、合成界面活性剤無添加ではあるが、原価は限りなくタダに近いものだったりします。違法ではありませんが、あまり褒められた商売とは言えません。

 結局、無添加を売りにする商品を鵜呑みにし、「値段が高いほど良いもの」と考えると、そこにつけ込まれてしまうわけです。

 アミノ酸系シャンプーの代表的な成分、ココイルグルタミン酸TEA(トリエタノールアミン)などは、原材料としてはかなり高額な部類ですが、ボトル1本当たりの原価は200〜300円程度、それがおよそ10倍の2000円前後で、製品は取引されているのが実際です。これが美容院などで使われているアミノ酸系シャンプー全般にいえる価格設定です。ちなみに通常のシャンプーの原価も、製品の1/10程度ですから、アミノ酸系シャンプーがぼったくりをしているというわけではありません。しかし、ノンシリコンシャンプーの価格設定はこれをはるかに上回っており、まさにぼったくりです。

 200mlくらいの内容量で2000円前後。シャンプーという商品をつくる上で最良の原価配合ですから、逆にいうとこれを大きく上回る価格は、何かしらの裏があるはずです。その理由を正確に見抜くのはなかなか大変ですので、特段の事情がない限り、その辺りより下の価格帯でシャンプーを探してみてはいかがでしょうか?
(文=へるどくたークラレ)

【本記事は、サイエンス・ライターによる化学コラムです。薬を使用する際は、医師や薬剤師にご相談ください。】

●へるどくたークラレ 
 数々の大型書店で理系書売り上げ1位となった『アリエナイ理科ノ教科書』著者。サイエンスライター。生化学を専門に、化学兵器、ドーピング問題、ドラッグといったジャンルから添加物や化粧品といった生活に根ざした題材を取り上げることも。サブカル雑誌から化学専門誌まで幅広く連載を持つ。
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