学歴選別強まる就活の裏側~中位大学以下はエントリーすらできない?
同日発売のライバル誌「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)が、「大学徹底比較 就職に強い学部・ゼミ・体育会はここだ!」という特集で就職率に迫った大学選びを取り上げているが、東洋経済は就活に関する心構えを中心にしている。
そもそも就活生の動きも、明らかに変わり始めている。2008年のリーマンショック以後、就職難といわれ続けた新卒採用市場。就活生は強烈な危機意識の下、がむしゃらに活動していた。だがここへきて、13年卒の就職率は93.9%と、リーマンショック以前の水準に近づきつつある。アベノミクスに東京オリンピックと、雇用環境の好転を期待する楽観ムードが漂っているのだ。
3年生向け就職ガイダンスの参加率は、多くの大学で減少。エントリーシートを提出する数、OB・OG訪問に行った人の割合も漸減。「就活生の活動量が減り、省エネ化が進んでいるのだ」という。しかし、就活生が油断できないのは、企業側も省エネ化が進んでいることだ。
●企業側は、採用する大学を絞り込んでいる
「就活の短期化や、大学生数の増加による母集団の拡大といった条件の下で、いかに欲しい学生を採るか。企業はそこで、あらかじめ重点採用校を絞り込み、集中的に採用活動を行うようになってきている。これはターゲティング選考と呼ばれ、重点採用校はターゲット大学といわれる。なんらかのターゲティングをしている企業は年々増え続け、14年卒採用ではついに過半数を超えた」のだ。
重点採用校で最もターゲットされているのが、GMARCH(学習院大、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)だ。学生数も多く、大企業からも中小企業からも人気が高い。ターゲットから漏れた大学は悲惨だ。学歴フィルターによって、大学名だけで選別されるのだ。
パソコンで、同時刻に採用説明会の予約を行おうとしても、重点採用校の学生は「説明会予約」のボタンをクリックできるが、それ以外の学生に表示されるのは、ずらりと並ぶ「満席」の赤字なのだ。重点採用校の学生でない限り、エントリーすらもできないというのが現状なのだ。雇用環境が多少好転しても、大学間格差が広がっている今、中位校以下の大学に通う大多数の学生には油断ならない状況が続いているのだ(特集記事「知らないと損する! Q&A新卒採用の裏側」)。
企業がターゲティングに走る背景には、今の2年生、つまり16年卒採用から、選考スケジュールが再度変更されることも関係している。
「広報解禁が12月から3月に、選考開始が4月から8月にと、大幅に後ろ倒しになる。多くの企業は10月1日に正式内定を出し、内定式を行う。選考開始が8月では、正式選考期間がわずか60日しかない。これまでのように大量のエントリーをさばく余裕はなくなる。もっと効率のいい選考方法に変えたい–。実際の時期変更は16年卒からではあるが、多くの企業は15年卒からある程度のシミュレーションを行うとみられる。そのひとつの手法として、ターゲティングが去年よりさらに先鋭化することは間違いない」という。
こうした状況の中で迎える今年12月の広報解禁に注目だ。
なお、筆者が受験していた時代にはMARCHと呼ばれた5大学に、最近はGMARCHと冒頭にG(学習院大)が付くようになったのがいまだに不思議だ。学習院大のプロモーション力がすごかったのだろうか?
今週は両誌とも就活関係の特集だったが、もし中央大学関係者であれば、名門・中央大学法学部の凋落をレポートした「週刊ダイヤモンド」よりも、重点採用校として、GMARCHの一角である中央大学もターゲットされているとした「週刊東洋経済」のほうが読んで元気が出そうだ。
(文=松井克明/CFP)