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「ダイヤモンド」vs.「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(11月第2週)

迫る自動車革命、主役はグーグル?勢いづく燃料電池車、劣勢のEV…激化するエコカー戦争

迫る自動車革命、主役はグーグル?勢いづく燃料電池車、劣勢のEV…激化するエコカー戦争の画像1「Thinkstock」より
 「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/11月9日号)は『自動運転+エコカーが世界を変える スマートカー巨大市場』という特集を組んでいる。「自動運転、燃料電池車など、遠い未来のものと思われた技術の実用化が近づく。日本の基幹産業に革命が迫っている」という内容だ。

 この10年、「電動化」がキーワードとなって、自動車と電機の融合が進んだ。「現在では、自動車の原価に占める電子部品の比率は、ガソリン車で3割以上、ハイブリッド車では5割に迫る」という。

「次の10年の変化はもっと激しいものになる。基軸は、自動運転と燃料電池車だ」と自動車トップアナリストは語る。次の10年は電機とさらに融合し、スマートカーが走りだす「自動車革命」の10年だ。自動車の130年の歴史の中でも大きな10年になりそうだ。

 スマートカーとは、各種のセンサーによって周囲の状況を検知し、ドライバーを補助してくれる。さらにインターネットとつながることで、車内にさまざまな情報や音楽などの娯楽も提供できるようになるのだ。日本では高齢化による高齢ドライバーの安全性対策、苦境で新たなビジネス機会に乗りだすことが求められている電機産業の事情もあって、政府は安全運転支援・自動運転システムや次世代車を国の成長戦略に取り込み、2020年代には車載向け電機市場は現状の15兆円から30兆円に倍増すると見られている。

●シリコンバレーに集中する世界の自動車メーカー

 自動車革命を引っぱるのはグーグルだ。グーグルは17年のスマートカーの実用化を目標として掲げているが、グーグルマップで蓄積した地図情報に自動運転が結びつけば、既存の自動車産業をひっくり返すような革命になるのだ。米国・カリフォルニアのシリコンバレーでは「ロボットカー“車は走るロボット”」と見なし始めている。シリコンバレーの中心にあるスタンフォード大学では、エリートたちは最もホットなテーマである“自動車”を研究し、BMW(ドイツ)、フォルクスワーゲン(ドイツ)、GM(ゼネラル・モーターズ、アメリカ)、フォード・モーター(アメリカ)と、自動車メーカーが続々と研究拠点を設立。日本の自動車メーカーも11年以降、ホンダ、トヨタ自動車、日産自動車と研究拠点を構えた(特集記事『シリコンバレー徹底取材 自動車IT革命の現場を追う 世界の自動車大手が結集 先端技術の金脈を探る』)。

 日本の自動車メーカーでは、すでに緊急時の自動ブレーキシステムなどは高級車の標準装備になりつつあるが、日産自動車が20年までに高級車から大衆車まであらゆる車種で自動運転を実現すると目標を掲げ、トヨタも10年代半ばに、高速道路での自動運転機能を実用化する予定だ(特集記事『PART1 自動運転と「つながる車」がライフスタイルを変える 先端技術革命が始まった』)。

 一方、エコカーといえば、次世代自動車の大本命として期待された電気自動車だが、電池性能の限界が足かせとなり、燃料電池車にその地位を奪われている。燃料電池車は、水素と酸素の化学反応から生み出した電気を動力源にモーターを回して走る自動車で、航続距離もガソリン車と比べて不足はない。自動車メーカーは開発や提携の動きを加速させている。トヨタはBMWと開発提携、20年以降には共同開発車を量産化することを目指し、ホンダもGMと提携し、20年以降を目標に共同開発車の投入を目指している。一方で、電気自動車を本命と位置付ける日産はフォード、ドイツ・ダイムラーと提携し、17年に共同開発車を投入する予定だ。燃料電池車対電気自動車の主導権争いも注目だ(特集記事『PART3 電気自動車と燃料電池車が火花 白熱する次世代車商戦』)。

●自動運転を可能とするロボット化は実現するか

 かなり気合の入った良特集記事だ。インタビューではスヴェン・ベイカー・スタンフォード大学自動車研究センター所長を紹介。ベイカー氏は、将来の自動車は「ワイヤレス充電によって、運転しながら充電できる」「需要に応じて公共の場でシェアできるようになる。例えば『5人がけのオープンカーを今すぐに』とスマホで予約を入れれば、車のほうから利用者のところへやってくる」などとハリウッド映画ばりの“車は走るロボット”夢物語を語っている。

 確かに自動運転が実現すれば、運転技能が低下した高齢者や、運転が苦手な女性も顧客になり、渋滞緩和や燃料節約にもつながる……といいことばかりのようにも聞こえるが、かつてAT(オートマティック)車が普及し、都市部の渋滞が加速したように、自動車がより便利になれば渋滞はより深刻なものになるのではないか。

 当初はスマホもいいことばかりが喧伝されたが、歩きスマホに子どものスマホ中毒、電車のなかでもノルマに追われた営業マンは通話し放題で、スマホは便利さと同時に多くのトラブルとストレスも社会にもたらすようになった。便利さに依存しすぎる人間(とそれを加速させる企業)をコントロールできる方法も、スタンフォード大学のセンセイには考えていただきたいものだ。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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