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ヤフー、なぜ減益必至でもEC無料化?狙いは劣勢挽回と楽天出店者の奪取

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孫正義氏(「Wikipedia」より/nobihaya)
 10月8日の東京株式市場で、ヤフー楽天の株価が急落した。前日、ヤフーの孫正義会長がネット通販サイトの出店を無料にすることを明らかにして、三木谷浩史会長兼社長が率いる楽天に挑戦状を叩きつけたからだ。楽天だけでなく、ヤフーにも売りが殺到した。電子商取引(eコマース)で価格競争が本格化し、事業の収益性が低下しかねないとの懸念が広がったためだ。孫会長の発表から2日間で、両社の時価総額は合計で5530億円以上が吹き飛んだ。それほど無料化のインパクトは大きかった。

 ヤフーが10月7日に開催したイベントで無料化を発表したのは、宮坂学社長兼CEOではない。ソフトバンクの社長としてではなくヤフーの取締役会長の肩書で登壇し、ネット通販サイト「Yahoo!ショッピング」とオークションサイト「ヤフオク!」への出店を無料にすると発表した。現在、ヤフーの通販サイトに出店するには初期費用が2万1000円、月額出店料が一律2万5000円かかる。ロイヤルティーも売り上げの1.7~6.0%を徴収している。

 孫会長は出店料を無料にすることで「2019年までに、国内eコマースの流通総額と商品数で(ヤフーが)1位になる」とぶち上げた。

 孫会長が挑戦状を叩きつけた相手は楽天だ。ネット通販の売り上げで国内首位のアマゾンは自社で商品を仕入れる直販モデルが主体で、仮想商店街を運営し、出店企業から手数料を得る楽天やヤフーと事業モデルが異なる。一方、楽天市場では初期費用が6万円、月額出店料が1万9500~10万円、ロイヤルティーは売り上げの2.0~6.5%が必要だ。ヤフーは出店料を無料にすることで、楽天市場の出店者を奪い取ることを狙っている。

 反響は凄まじかった。ヤフーは11月9日、「Yahoo!ショッピング」(現在のストア数は2万店舗)への出店希望者が1日で通常の数百倍に当たる1万件に達し、新たに受け付けを始めた個人での出店希望者数も1万6000件に上ったことを明らかにした。宮坂社長は無料化後、10月24日までに5万5000件の出店申し込みがあったと発表した。「これまで10年間で3万件だった。今後も出店は増える」と期待を示した。

 無料化は、ヤフーがこれまでの「手数料モデル」から脱却して「広告収入モデル」に大きく舵を切ったことを意味する。楽天を含め、多くのショッピングモールは出店者を集めて囲い込み、出店料や売り上げ手数料を徴収するビジネスモデルで成り立っている。

 もちろん、これだけ大胆な策を取るとなれば、ヤフーも無傷ではいられない。無料化に伴い四半期(3カ月間)で売上高は25~35億円減る。営業利益も30~45億円減ると見込まれている。収益の悪化懸念から、ヤフー株も売られたわけだ。

 これまで未定としていた14年3月期連結決算の売上高は前期比12.9%増の3871億円、営業利益は同3.6%増の1930億円を見込んでいると10月25日に公表した。13年度下期(10月~14年3月)の営業利益は同5.7%減の951億円と、1996年の設立以来、初の減益になる。出店料などが10月から入らないことによって下期は減益。増収・増益の幅も大幅に圧縮されることになる。

●ヤフーのしたたかな計算

 eコマース市場で、ヤフーはアマゾン、楽天の2社に大きく水をあけられている。ヤフーの13年7~9月期のeコマースの取扱高は、前年同期比4.9%増の3937億円。主力はオークション事業で、ショッピング事業の取扱高は737億円と1.1%減のマイナス成長となった。一方、楽天 の13年4~6月期の国内グループの流通総額は1兆2282億円で、前年同期比25.7%増と2ケタの伸びを見せた。

 ヤフーは、市場が急拡大しているネット通販の波に乗れない。劣勢を挽回する切り札が、出店費用をゼロにすることだった。ヤフーは売り上げの70%を広告関連で稼いでいる。eコマース事業は全体の26%にすぎず、主力ではない(7~9月期実績)。ショッピングモールの出店者から手数料を取らなくても、広告収入が増えれば元は取れる。

 対する楽天は、eコマース事業が55%を超える主力事業だ(1~6月期実績)。有力な検索サイトを持たない楽天は、広告収入で稼ぐことができない。出店者からの出店料や売り上げ手数料に頼らざるを得ない。価格競争になれば楽天のほうが打撃は大きいと投資家は判断して、株価が急落した。