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復調の吉野家、低迷脱出見えないマック、何が明暗分けた?チグハグ戦略で店舗力低下

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東京都内のマクドナルドの店舗(「Wikipedia」より/Paul Vlaar)
 少し前まで業績低迷に苦しんでいた牛丼チェーン最大手の吉野家と、ハンバーガーチェーン最大手の日本マクドナルド。扱う商品は違えど「安くて、早くて、そこそこ美味しい」という点では共通点の多い両社だが、吉野家が現在復活の兆しを見せ始めているのとは対象的に、マクドナルドはなぜ依然として業績低迷脱出の突破口を見いだせないでいるのか。今回はその差異を生じさせている要因を、マーケティングの視点から探ってみよう。

●牛丼低価格戦争の終焉

 昨年後半から「牛すき鍋膳」(並盛580円)を中心とした高価格帯商品を販売し、業績や株価が回復基調にある吉野家。すき家やなか卯などとの牛丼低価格戦争、焼牛丼という新たなジャンルで切り込んできた東京チカラめしとの争いに自ら終止符を打ったかたちだ。吉野家の好調ぶりを見て、売り上げ不振が著しい東京チカラめし以外の競合他社はさっそく動き始めた。

 前出の大手牛丼チェーン各社が苦しんでいた低価格戦争。どの企業もやめたい気持ちを持ちながら、競合他社の値下げに追随して値下げを繰り返さざるを得なかった。売り上げやシェアを失わないために、どの企業も自社の利益を削って続けてきた低価格戦争から降りた吉野家。単価の安さを客数で補うのではなく、客数は少なくとも単価を上げることで利益を上げようとしたのが昨年末。当初は、高価格な吉野家の「牛すき鍋膳」などうまくいくのかどうか、競合企業も様子見だったが、その成果が徐々に明らかになってきて、他社も従来の「煮る牛丼」中心のビジネスモデルから戦略を変更し始めたのだ。

 吉野家が「牛すき鍋膳」でうまくいき始めるのを見るやいなや、まず、すき家は吉野家と同金額で「牛すき鍋定食」を投入した。広告でも「すき家の牛丼」「すき家のどんぶり」というメッセージをやめ、「牛すきからすき家が始まった」というメッセージを打ち出し始めた。トレンドに乗り高価格帯商品を投入することで、収益構造を改善したい気持ちがありありと見える。

 また、なか卯は通常の牛丼の販売をやめ、牛すき丼(並盛り350円)を投入。すき焼きというトレンドに乗りつつ、より低価格なメニューで客を取り込もうという戦略だ。こうした戦略はトレンドに乗っているため一時的に売れ行きは良くなるだろうが、後追いではなく、自分たちのコアとなるメニューやバリューをつくっていくことが大事だ。そうでなければ、行く先に待っているのは新たな低価格戦争への道であり、低収益への道であることに変わりはない。

●マクドナルドのちぐはくな戦略

 そんな吉野家を尻目にマクドナルドが低迷を続けている理由は、本格カフェをコンセプトとする店舗・マックカフェ導入あたりから続く戦略のちぐはぐさが大きい。低価格のコーヒーで長く居続ける客が増え、単価も上がらず客数は減少した。何より従来の重要顧客層であったファミリー層を失ってしまった。月替わりメニューやカウンターでのメニュー表廃止(現在では復活)により店員の対応スピードは遅くなり、クールな店員は増えたがスマイルの店員は減った。

 そして直営店を減らしフランチャイズ店を増加させたことにより、本部の意向を理解できぬまま複雑なオペレーションを強いられる店舗が増えてしまったことも、店頭の対応力を著しく落とすことになった。

 昨年末からスタートした新カサノバCEO体制は、ファミリー層をメーンに据える姿勢に戻りつつある。店舗でカバーできない来客数減を補うべく、宅配事業を強化しようとしている。確かに明らかなマイナス点をカバーしようとしている点については正しいのだが、チグハグすぎる状態を立て直すためには、時間と労力がかかるだろう。