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スクープ報道に対する企業のコメントに異変?適時開示に関する東証新制度の影響と懸念点

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ローソンの店舗(「Wikipedia」より/Kuha455405)
 7月17日付毎日新聞は、ローソンが首都圏を中心に高級スーパーマーケットを展開する成城石井を買収すると報道した。同紙によれば、ローソンが成城石井を保有する投資ファンド、丸の内キャピタルと500億円規模で買収交渉を進めており、さらに三越伊勢丹ホールディングス傘下で高級スーパーマーケット事業を手掛けるクイーンズ伊勢丹の買収も検討しているという。

 この報道に対して、ローソンは「本日、一部報道機関におきまして、『ローソンが成城石井を買収』との報道がなされました。検討を行っていますが、買収の有無、金額等何ら現時点で決定した事実はございません。また弊社が『クイーンズ伊勢丹』の買収を検討した事実はございません。開示すべき事実を決定した場合には、適時適切に公表いたします」とコメントを発表した。

 このコメントには、これまでのスクープ報道に対して企業が行ってきたコメントとの違いが明確に現れている。従来、こうしたスクープ報道がなされた場合の企業側のコメントとは、「そうした事実はございません」「開示するような事実はございません」「当社が発表したものではありません」といった事実上の“ノーコメント”だった。しかし、ローソンは「成城石井の買収を検討している」ことを認めている。

●東証の情報開示に関する新制度

 こうした企業側の変化の背景には、東京証券取引所(以下、東証)の企業による適時開示に対する制度改革が影響している。5月22日、東証は従来の「開示注意銘柄制度」を新たな「不明確な情報等に関する注意喚起制度」に変更した。

 この制度は、「投資者の投資判断に重要な影響を与える恐れがある不明確な情報が生じている場合」など、注意を要すると認められる事情があり、その周知を必要と認める時に、東証が投資者に「注意喚起」を行うというものだ。

 東証はスクープ報道などにより、投資者の投資判断に重要な影響を与える恐れがあると判断した場合には、その有価証券の売買を停止することができるとともに、流布されている情報の真偽などを上場会社に対して照会することができる。照会を受けた上場会社は、「直ちに照会事項について正確に報告する」ことが義務付けられている。さらに、その照会に関する事実について、上場会社が開示を行うことが「必要かつ適当」と東証が判断した場合には、東証の要請に基づき、上場会社は「直ちにその内容を開示する」ことが求められている。

 この東証の新制度の導入が、企業に対して事実上の“ノーコメント”を認めなくなった。企業側は、その時点において許容できる最大限の範囲で、事実に基づいた情報を開示する義務が課せられたのだ。

 しかし、気を付けなければならないのは、東証が企業に対する開示義務を強化したからといって、それをマスコミが安易に利用することだろう。しっかりとした取材に基づく事実確認もなく、“エセ・スクープ報道”やいわゆる“飛ばし記事”といわれるような、憶測に基づくスクープ報道がなされ、その事実確認を東証の制度に委ねるような悪用がなされれば、市場の混乱を招くことになる。

 企業に“ノーコメント”を認めない以上、マスコミもより正確な報道が求められることになる。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)