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任天堂、苦境を招いた複雑な社内事情 岩田社長、抜本対策を示せず“動じない”理由

文=田沢良彦/経済ジャーナリスト
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任天堂、苦境を招いた複雑な社内事情 岩田社長、抜本対策を示せず“動じない”理由の画像1任天堂本社(「Wikipedia」より/Moja)
 スマートフォン(スマホ)にクラウド。急速に進むゲーム業界の技術革新で家庭用ゲーム専用機(以下、ゲーム機)の需要が先細りする中、任天堂が業績回復のきっかけを掴めずにいる。その同社の岩田聡社長に対し「危機意識が感じられない」(同社関係者)との批判的な声も一部からは聞こえる中で、岩田氏をめぐり様々な臆測が飛び交っている。

 同社が7月30日に発表した2015年3月期第1四半期(14年4―6月)連結決算の純損益は99億円の赤字(前期は86億円の黒字)。売上高も前期比8.4%減の747億円だった。14年3月期(通期)の連結決算も売上高が前期比10.0%減の5717億円、営業損益が464億円の赤字、純損益が232億円の赤字。売上高は5期連続の減少で、営業赤字は3期連続だった。

 同社は当初、据置き型ゲーム機「Wii U」の販売台数を900万台と見込んでいたが、272万台しか売れなかった。当初3800万本を見込んでいたソフトウェアも半分以下の1886万本にとどまった。これで13年3月期連結決算発表時の業績予想が大きく狂い、売上高は当初見込みの9200億円を3483億円も下回る5717億円で、ピーク時売上高のほぼ3分の1に縮んだ。さらに13年1月の経営方針説明会で岩田社長は「1000億円以上は公約」と宣言した営業利益に至っては464億円の赤字。公約と実績の乖離は実に1464億円に膨らんだ。

●岩田社長の余裕

 証券アナリストは「スマホやクラウドの普及に、従来型ゲーム機は押されつつある。任天堂は『ゲーム機離れ』をしない限り、業績改善は難しいのではないか」と指摘する。一方、岩田氏は「ゲーム機ビジネスは博打のようなもの。当たる時もあれば外れる時もある」として一向に動じる気配をみせない。同アナリストは「岩田氏をインタビューしていても、追い詰められている意識がないようだ」と評している。

 このような岩田氏の姿勢は一貫している。1月17日付日本経済新聞のインタビューで、3期連続営業赤字に陥った原因については「前期までの2期は超円高への対応で大変だった。しかも、主力ゲーム機の乗り換え期で普及台数が少なく、ソフトの売れる数が限られた。今期はもっと売れると準備もしていたが、結果はそうならなかった。一方で利益を出しやすい旧来のゲーム機の販売が大幅に減り、主力ゲーム機の切り替えに苦戦している」と説明する。

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