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日銀、「2年2%」物価目標断念 焦る黒田総裁、「言ってない」と感情あらわに撤回

文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト
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日銀、「2年2%」物価目標断念 焦る黒田総裁、「言ってない」と感情あらわに撤回の画像1日本銀行本店(「Wikipedia」より/Wiiii)
「(2013年4月の量的・質的金融緩和開始当初から)15年度中にとは言っていない。16年度に入るとも言っていない」――もはや屁理屈でしかないと思った関係者も少なくない。

 1月21日、日本銀行の金融政策決定会合後の記者会見で、黒田東彦総裁は珍しく気色ばんだ。同日、15年度の物価見通しを14年10月時点の1.7%から1%に修正。「2年程度で 2%」と定めた物価上昇目標が遠のき、会見では記者たちから集中砲火を受けたのだ。

「黒田日銀が期待を集めたのは、13年4月の緩和時に、2年の期間を定めてインフレ目標にコミットメントする強い意欲を示したから。その達成が危ぶまれているのだから、追及されても仕方がない」(日銀担当記者)

 だが、会見では黒田総裁はのらりくらりと記者の質問をかわし、「金融緩和を始めた当初から達成時期については2年程度と言ってるのだから、認識に変化はない」と強調。「(達成のメドとされた15年度から)前後にはみ出る余地はある」と発言したことで、後ろ倒しになるのかと聞かれると、冒頭の発言に至ったわけだ。

「気色ばんだ黒田総裁は初めて目にした。この焦りは相当なもの」(同)

「変化はない」と言った黒田総裁だが、表現を微修正してきたことは明らかだ。緩和直後は「2年で2%」と打ち出していたが、いつのまにか「2年程度で2%」にすり替え、具体的な目標時期についても「14年度後半から15年度にかけて2%」が「15年度を中心とする期間に2%」に変化した。

 黒田総裁は「程度」や「中心とする期間」の解釈に常識的な判断を求めたが、曖昧な表現を多用することで、いくらでも都合の良いように解釈できるようになったのは明らかだ。事実上の達成時期へのコミットをあきらめたと言っても過言ではない。

強気の姿勢を崩さない理由

 時期どころか2%の達成自体が危ぶまれながらも、日銀が静観したことで政策運営の整合性を疑問視する声も出てきそうだ。昨年10月のサプライズ追加緩和は消費増税の影響もあったが、大幅な原油安によるデフレ懸念が大きな要因であったことは黒田総裁も認めていた。一方、原油価格の指標であるニューヨーク原油先物は、足元で昨年10月時点に比べて4割以上下落している。そのため、再度の追加緩和に踏み切るのではとの見方がエコノミストの間ではあった。

「10月と異なり、デフレマインドに戻る懸念は払拭されている」。黒田総裁は追加緩和を見送った理由をこう述べた。足元では原油価格が物価にマイナスに影響しているが、中長期では経済や家計にプラスに働き、物価上昇は急加速するという基調は維持されており、政策変更は必要がないというのが日銀の理論だ。

 とはいえ、物価上昇を支えた円安効果は剥落しつつあり、むしろ原油安が足元では物価押し下げ要因になっている。それでも日銀が強気の姿勢を崩さないのは、企業のベースアップの動きだ。経団連が2年連続でベアを容認したことで、実質賃金の上昇による経済の好循環メカニズムを見込む。日銀関係者も「物価の鈍化は原油安で明白。ベアの動向とその効果を見るまでは静観するのでは」と口をそろえる。 

 もはやベア頼みの日銀だが、民間企業は昨年に比べて規模や業種による収益の差が大きい。自動車や電機などが高収益な一方、小売業界などでは消費増税の影響も大きい。野村證券がまとめた主要企業の経常利益増減率は、14年度見通し5.4%増で、前年度の37.4%増から急落する。

 ベアの余力は果たしてあるのか、そしてどこまで浸透するのか。ベアの行方次第では、日銀は掲げ続けた2%の旗を降ろさざるを得ない状況に追い込まれる。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)

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