国内航空3位のスカイマークの経営再建策づくりが迷走している。本稿の執筆段階(1月25日)でみると、資本てこ入れ策で全日本空輸(ANA)に出資を拒否されただけでなく、集客力立て直しの柱だったはずのANA、日本航空(JAL)との共同運航に関する国土交通省への認可申請も当初計画よりずれ込んでおり、八方塞がりに陥っている。状況を伝える報道は深刻なトーンにあふれ、株価も再建期待に沸いた昨年12月半ばの高値と比べると4割近く下落した。これまでの報道を見る限り、マスコミの多くが問題視しているのは、支援先をコロコロ変えており節操がないかのように映るスカイマークの戦略や、ベンチャービジネスの経営者らしい西久保愼一社長の豪放磊落な個性のようだ。
しかし、事態の推移をみると、自民・公明両党の航空族議員や国交官僚の哲学なき介入が事態を混迷させた事実が、あまりにも軽視されてきたのではないだろうか。この問題は、安倍晋三首相の一枚看板の経済政策であるアベノミクスの「第3の矢」(規制緩和・成長戦略)の実現性にも大きな影を落とす深刻な“事件”といってよいはずだ。
「出資するような投資ファンドが、本当に存在するんでしょうか。何か情報は入っていませんか」――。
1月21日夕方のこと。ある大手航空会社の中堅幹部が関西訪問中の筆者に電話をかけてきて、こう切り出した。この人物は、筆者がジャーナリストとして秘匿すべきニュースソースでもあるので、航空会社名や人名は伏せさせていただく。だが、事態を理解するために必要と思われるので、この航空会社がスカイマークの支援を期待されている大手航空会社2社のうちの1社であることは明らかにしておく。その上で話を進めると、切り出した言葉とは裏腹に、この人物がファンドによるスカイマークの支援情報を筆者から得られると期待していたとは思えない。
というのは、この日はスカイマークが3月29日から運航する「夏ダイヤ」を国交省に申請した日だからだ。そして、同社はこの日、夏ダイヤだけでなく、ANA、JAL両社との共同運航の認可申請も行いたいと希望していた。ところが、共同運航は交渉が合意に至らず、「夏ダイヤ」の申請だけが行われたのが、この1月21日だったのである。
あくまでも推測だが、筆者にコンタクトしてきた大手航空会社幹部の狙いは、交渉に合意できなかった責任は自社ではなくスカイマークにあるという主張を、情報不足にかこつけてそれとなく伝えることにあったのだろう。共同運航というかたちで再建を支援するには、スカイマークが誠実さを欠いており、再建策の全体像を明かさないので、応じようがなかったと言いたかったのである。