一般的には、スカイマークの経営危機は国交省が積極的に参入の旗振りをしてきたLCCとの価格競争で守勢に回り、収益が悪化したことが原因として語られることが多い。しかし別表で明らかなように、スカイマークの経営悪化の最大の原因は、JALの復活の煽りとみるべきだろう。実際、スカイマークの業績は、13年3月期から急速に下降線をたどっている。この13年3月期こそ、期中の12年9月19日にJALが株式の再上場を果たし、本格的な反攻を開始した時期なのである。
スカイマークは当時、JALの戦略を模倣していた。座席の間隔を広げて快適さを売り物にし、LCCと安さを競うことを避けて採算を確保するという戦略である。しかし、スカイマークと国策支援を受けたJALでは、体力が違う。そうした投資負担は、スカイマークには重すぎたのだ。その結果、スカイマークは採算が急速に悪化し、経営危機に陥っていった。これがスカイマーク問題の真相といえるのである。
財務諸表を分析すれば、その事実は明らかだ。機材費が売上高に占める比率が14年3月期に18.80%と2年前(12年3月期は10.98%)の2倍近くに跳ね上がっているからだ。こうした事実をみれば、国交省がJALを生きながらえさせたことの罪の大きさも理解できるはずだ。
筆者は、会社更生法の正式な適用申請の3年以上前に、JALが実質的に破たんしていた事実を見抜き、他に先駆けて週刊誌「週刊現代」(講談社)で報じた。加えて、12年9月刊行の拙著『JAL再建の真実』(講談社現代新書)では、淘汰されるべきJALの存続が引き金になって、別の航空会社が破たんに追い込まれる懸念を指摘していた。その懸念が現実化したのが、今回のスカイマークの経営危機劇といってよい。
そこで改めて今一度指摘しておかなければならないのは、国交省が市場競争の結果を捻じ曲げてスカイマークの存続に手を貸せば、市場の需給調整機能が損なわれて、何年か後に再び別の航空会社が破たんの危機に追い込まれるリスクがあるということだ。国交省は、ただちに不毛な過剰介入をやめるべきである。さもないと、再び航空市場を歪める恐れがある。
さらに、こうした介入の横行は、自由なはずの経済を、国家や政治家、官僚たちが主導して牛耳りたいという日本の構造問題を象徴している。これでは、規制を緩和して民間の活力に経済・経営を委ねて経済成長を実現するというアベノミクスの「第3の矢」に、魂が入る日が決して到来しないことも明らかといってよいだろう。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)