三井住友FGは10年に英バークレイズと合弁会社を立ち上げ、富裕層向けの金融業務に参入。5億円以上の金融資産を持つ顧客を対象に、欧米流の資産運用サービスを始めた。13年には仏金融大手ソシエテ・ジェネラルから富裕層向けビジネスを買収、SMBC信託銀行(中川雅博社長)で本格展開している。シティから取得した事業を15年10月をメドにSMBC信託銀行に統合させる計画だ。同行はもともと外資系だったこともあり、シティの事業、企業風土や顧客層の親和性が高いと判断して統合を決めた。
買収の成否は、シティの最大の強みであるグローバルネットワークに接続している190万台のATM(現金自動預払機)が、いつまで利用できるかにかかっている。シティは世界200以上の国・地域でATM網を展開。各国のATMで現地通貨を引き出せるなど、強力な海外サービスが魅力だ。日本でも、海外出張が多いビジネスパーソンや海外旅行好きの高齢者がシティの顧客層に多いのはこのためだ。
海外ATMの利用は、最低2年間は継続される。その後は三井住友銀行のシステムに統合する方向だが、円滑な事業継続を図るため、譲渡完了後もシティのシステムを当面使用する。自前のシステムへの移行は、早くて3年後になる。
邦銀の海外ネットワークは、シティグループに遠く及ばない。買収後、海外ATMで預金を引き出せるサービスがなくなれば、顧客が逃げていく可能性が高い。そのため、三井住友銀行側は事業譲渡が完了する今年10月までに優良顧客が大きく増減した場合は、買収額が300~500億円の範囲で変動する条件をつけた。優良顧客の目減りをどこまで食い止められるかで、三井住友銀行の実力が試されることになる。
●ダイナース争奪戦は越年に
一方、新生銀行と三越伊勢丹ホールディングス(HD)、JCBの3社は共同で、シティ傘下のクレジットカード会社シティカードジャパンを買収する提案をした。すでに買収の意向を表明している三井住友信託銀行との全面対決になる。シティカードはダイナースクラブカードや会員80万人を有する。