少子高齢、人口減少の流れが止まらない日本で、大企業にさえ勤めていれば、一生安心、収入は右肩上がりに増えていくという幻想の時代は終わりました。
「いつかは起業したい」「自分のビジネスを立ち上げたい」と考えるサラリーマンも、かなり多いはずです。
それでも、実際にその考えを実行に移す人は、やはりそうは多くありません。ほとんどの場合、そこには「資金不足」という壁が立ちはだかるからです。
起業にあたって、事業が軌道に乗るまで持ちこたえられるだけの潤沢な資金を用意できる人はどちらかといえば少数で、多くは出資を募ったり借金をしたりして「資金調達」をしないといけません。この「資金調達」が問題です。
「どこから調達するか」「どのように調達するか」「いくら調達するか」
これらは事業の行く末に大きく関わります。起業を志す人は事業の内容だけでなく、こちらにも十分意識を注ぐべきなのです。
では、事業を興した経験のない、言ってみれば「信用のない起業家」はどのように資金を調達すればいいのか。会計士として数々の起業のサポートをしてきた原尚美さんの著書『ダンゼン得する いちばんわりやすい 創業融資と補助金を引き出す本』(ソーテック社/刊)から見ていきましょう。
■「親に借金」だけが方法ではない
今のところ、日本には一般の投資家が起業家に積極的に投資するような習慣はなく、それが資金調達を難しくしています。
ただ、その代わりに国の政策として起業を応援しているということは知っておいたほうがいいでしょう。
「創業融資」「創業補助金」などのスタートアップ向けの資金調達制度は充実していますし、政府系金融機関は事業計画さえしっかりしていれば積極的に融資してくれます。自己資金だけでは起業できないと気づくと、つい親や友達をまっさきに頼ってしまうものですが、他の選択肢がいくつもあるというのは頭に入れておきましょう。
■資金調達額はどのように設定するか
「いくら資金を調達すればいいのか」も、初めて起業する人にとってはなかなか計りにくいものかもしれません。
これを把握する前に、まずは事業全体の立ち上げにどれくらいお金がかかるのかを計算する必要があります。本書によると、この金額は
・開業準備資金…設備や機材などにかかるお金 ・つなぎの資金…商品の仕入れ代金や店舗の家賃、交通費など、営業活動に必要なお金
・赤字補てん金…事業が軌道に乗るまでの赤字を補てんするお金。悲観的に予測するのがベター
・自分の生活資金…事業が十分に収益を上げられるようになるまでの自分の生活費。1年分は確保すべし。
この4つが必要。この金額の合計と手持ちの自己資金を比べて、足りない金額が融資による資金調達額の目安だといえます。