好景気にわくアメリカで3月23日、米連邦準備制度理事会(FRB)は2015年内のゼロ金利政策解除、利上げの本格検討の見通しを述べた。しかし、メディアの中には年内の利上げは避けるべきだという論調もあり、今後どのようになるのかは分からない。
この金利ゼロの世界を「異次元だ」と指摘し、アメリカ経済のデフレ突入を予測する人物がいる。“ドクター・ペンタゴン”などの異名を持つコンサルタントの若林栄四氏だ。
『異次元経済 金利0の世界』(集英社/刊)には若林氏による最新の経済予測が書かれている。本書によれば2015年は世界経済変換の年であり、アメリカでは株価が下落し、デフレに突入。一方で日本では2016年にリフレとなり、株価上昇という未来が描かれているが果たして…?
新刊JPでは本書の内容について深く掘り下げていく。今回のテーマは「ゼロ金利」だ。若林氏は「ゼロ金利」を“未知なる時代”と呼ぶ。それはなぜなのか?
■ゼロ金利とは「働いてもうまみのない経済」
日本は1999年2月以来、短期間をのぞいて事実上のゼロ金利を進めており、アメリカでも2008年から0%~0.25%の低金利政策が開始された。
若林氏によれば、この「ゼロ金利」は働いてもうまみのない経済だという。つまり、誰が何をやっても儲からない世界なのだ。
カール・マルクスの考えでは、資本主義は、資本の拡大再生産と蓄積が繰り返されて、経済が拡大していくシステムのことだ。ところが金利ゼロになると資本が拡大再生産されなくなる。それは実体経済の減速にも表れているという。
ここで若林氏はある矛盾を指摘する。それは、目下好調な株価の存在だ。どうして金利ゼロなのに株価は上がり続けているのか? それは、企業収益が伸びているからではなく、株を買い戻しているからだという回答を提示する。
■アメリカで起きている「富の不均衡バブル」
若林氏は金融業主導によるアメリカ経済再生そのものが「偽りの夜明け」だと主張する。
今、アメリカで起きていることは「富の不均衡バブル」だ。年収1000万ドルプレーヤーが増える中で、一般従業員(とりわけ男性)の年収はほとんど上がっていない。これは、経営陣と投資家の利益を増やすことが重要視され、賃金は最小化されるべき「コスト」とみなされていることが原因だ。こうなれば消費は冷え込むのも目に見えている。これも資本の拡大再生産を停止させる要因となっているのだ。
では、どうすればこういった状況から立ち直ることができるのか?
拡大再生産を図るための2つの方法があるが、そのいずれも「不健全な投資」だと若林氏は述べる。そして、アメリカ経済はこのままデフレ宣言に向かうというのが見方だ。
なお、1861年までさかのぼると40年周期でアメリカの金利は動いており、それに照らし合わせると2022年までアメリカの低迷は続くという。
FRBの動きに注目が集まっているが、アメリカ経済の実態がどうなっているのかを垣間見ることができる一冊である。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。