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「長考とは『正しく迷える』こと」“緻密流”佐藤康光棋士が語る、“長く考える”ことの大切さ

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※画像:『長考力』著:佐藤康光/幻冬舎

 「1秒間に1億と3手読む男」と呼ばれ、「緻密流」と評される将棋棋士の佐藤康光氏。強い棋士は「読む力」に非常に長けていて、いくつもの選択肢の中から最善の一手を選び、勝ちにまでを正確に読み切る。名人戦は1局に2日間を要し、最大で7局にわたる長時間の戦いになる。そんな厳しい将棋の世界で、佐藤氏はタイトル獲得通算13期を誇る。長時間にわたり集中し、何手も先を読む思考法はどんなものなのだろうか。

 『長考力』(幻冬舎/刊)は、そんな佐藤氏が「深く読む」極意を紹介した一冊である。

 持ち時間をフルに使ったり、序盤のまだ戦いが本格化していない局面から長時間の考慮を行うタイプの棋士は「長考派」と呼ばれ、逆にあまり時間を使わなかったり、勝負所までは短時間で指し続けるタイプは「早指し」「早見え」と呼ばれる。近年、プロ棋士戦の持ち時間は短縮傾向にある、早指しで指す機会は増えている。

 佐藤氏自身も、とにかく多くの経験を積むために、少しでも番数を稼ぎたいという気持ちから、奨励会時代は持ち時間が一手10秒の「10秒将棋」、持ち時間10分が切れると即負けになる「10分切れ負け将棋」をよく指したという。これは公式戦で秒読みになったときのためのトレーニングにもなるし、直感力を磨く効果もある。

 しかし、デメリットもある。当然、深い読みはできないので、直感だけで指してしまいがちになる。しっかりと読みを入れる将棋を指さないと、いつの間にか悪いクセがついてしまうのだ。

 本書のタイトルにもなっているように、佐藤氏は「長考派」だ。子どもの頃から切り捨てるべき枝も深入りして読んで長考するタイプだったそうだ。そして、プロになってからも、目の前の勝負の本筋から離れた枝についても、つい考えてしまうという。

 しかし、佐藤氏はそれが無駄だったとはまったく思っていない。本筋以外を切り落としてばかりいれば、実践の場で緊張感をもって読んだ経験が少なくなってくる。そうすれば、指さない戦型や選ばない変化ばかり増えて、自分の将棋がマンネリ化してしまうというのだ

 将棋は強くなればなるほど選択肢が増えるものだ。だからプロになる頃には多くの棋士はどちらかというと長考派になっていく。長考すること、つまり「正しく迷える」ことは強さのバロメーターでもあるのだと、佐藤氏は述べる。

 先の先を読む力、持続し続ける集中力、そして、長考することなど、棋士である佐藤氏の考えは、仕事や日常生活にも通じすことは多いはずだ。「緻密流」と称される佐藤氏の思考を参考にしてみてはどうだろう。
(新刊JP編集部)

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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。