もし、あなたが「頭がよくても、勉強していない人」と言われたら、どんな気持ちがするでしょうか。
以前私は、職場の同僚が共通の知人をそう評するのを聞いて、「きついことを言うなぁ」と感じたことがあります。同僚曰く、知人のそれは残念なことで、仕事で頼りにしようとは思えなくなっている。あれならむしろ「頭はよくなくても、勉強している人」のほうがマシというのです。同僚の話は、「勉強しない人の周りには、同じように勉強しない人が多い」「友達を見れば、その人がどんな人かわかる」と、エスカレートしていきました。
私は笑って同僚をなだめながらも、自分自身も勉強していないと思われたら(=そんなふうに周囲が感じるような自分だったら)いやだなと思ったものです。そう思われるようであれば、努力している人たちは、自分に近づいてこないと思えたからです。
学びたいテーマを書き出す
あなたも「自分は勉強しているべき」と思っている人であれば、そのセルフイメージを大切にしましょう。もしまだ十分に、あるいはまったく勉強していなくても大丈夫です。勉強というのは、どうはじめたらよいのかわからないことも多いからです。ここでは、勉強への取り組み方をいくつか紹介してみます。
まずは、学んでみたいと思うテーマを書き出すことから始めます。学びたいテーマがはっきりと、あるいは詳細までわからなくても心配しないでください。
たとえば経営について学びたいと思っても、具体的に経営の何について学びたいのか答えられない――こんなことがあるのは普通です。そうした答えは簡単に見いだせるとは限りませんし、むしろ、それについて考えたり調べたりすることが大切なのです。
書き出したなかから、どれを選んで取り組むのがいいのか検討しますが、書き出すときには、仕事と直接関係がなさそうなことも躊躇せず、気楽に挙げていきましょう。いろいろと連想したりして、できるだけたくさん書き出します。
計画を立てるときのコツ
勉強したいことを書き出したら、計画を立ててみます。書き出したテーマのなかから、もっとも取り組みたい、あるいは早急に取り組みたいものを選んでみましょう。その際には、複数挙げているテーマを「分類」してみることをお勧めします。「専門知識・教養」に関連するテーマ、「資格取得」に関連するテーマ、「スキルを身につけること」に関連するテーマの3つに分けてみましょう。
たとえば、前出の経営について学びたいというのは、「専門知識・教養」に入ります。TOEICなどの試験は「資格取得」として考えましょう。英会話を学びたいなら、それは「スキルを身につける」になります。
分類してみて、書き出したテーマがたとえば「専門知識・教養」に偏っているということがあれば、「資格取得」「スキルを身につける」についても、再度考えてみましょう。必ずしもすべてをカバーする必要はありませんが、せっかくの機会ですので、一度じっくり検討してみてもよいはずです。
もし「専門知識・教養」で、あまりテーマが浮かばなければ、一度図書館へ出向いて、さまざまな分野の本を眺めてみることをお勧めします。本を手に取らなくても、本棚に並ぶ本の背表紙に印刷されたタイトル(背文字)を眺めていくだけでもOKです。実にさまざまな分野のテーマがあることに、あらためて気づかされるでしょう。
「資格取得」についても、どんな資格があるのかを紹介する本がありますから、それを一通り見てみるとおもしろいはずです。
計画を立てようとするとわかりますが、1年の間に勉強できるテーマは決して多くないものです。たとえば資格取得でも、次の1年でいくつ取得できるでしょうか。現実的に考えてみましょう。
3つの分類のどれを優先したいか考えながら、「この先、いつまでにどのくらいの勉強ができるか」をじっくり考えて、練っていくのが計画づくりです。たとえば3年後には、いくつの資格を取得し、何を勉強した自分になっていたいでしょうか。
社会人として勉強するときに起こること
社会人として勉強に取り組もうとすると、時間的に制限があるだけでなく、それなりの邪魔が入ることもあり、たいへんな思いをすることがあるかもしれません。
筆者の私自身も、社会人院生として大学院に通っていた頃には、理解を示し、サポートしてくれる人たちがいる一方で、「飲み会に参加しないなんて、付き合いが悪い」とか、なかにはそれが「輪を乱す行為だ」と言い出す人さえ現れました。
私は、そうしたことを言われても、あまり気にしないでいられるタイプですが、こうしたことを言われて、勉強する機会をあきらめてしまう人もいるのではないかと思えたものです。実際に、同じように社会人で大学院に通っていた人のなかには、会社には内緒にしている人や、そのことで上司や同僚からプレッシャーをかけられて参っている人もいました。
こうしたことが起こり得ることを意識して、上手にバランスを取りながらやっていくことを心掛けましょう。
私は昔、勤務先のメーカーを退職するときに、だいぶ年下の後輩社員から「以前、資格の取得を勧めていただいて感謝しています」と言われたことがあります。私自身はそのことをすっかり忘れていたのですが、その後輩社員があるときに話していたことを聞いて、「そういうことなら、こんな資格があるから」と業務で定期的に立ち寄っていた商工会議所で資格試験の案内をもらってきて、渡したことがあったのです。
その後輩社員は、それを受験して合格してから、勉強して資格を取るのが「自分にとって普通のこと」になったそうで、その後も別の資格を取得したり、その話をしてくれたときにも、ほかに勉強しているテーマがあったようです。そして、「勉強をするようになって、時間を大切にするようになった」とも話してくれました。
私もその当時は、昼間は働きながら、夜は勉強するという生活が普通になっていたのですが、こんなふうに勉強に取り組む人が周囲に増えるのは、好ましいことだと思ったものです。
周りから「あの人は勉強している」と言ってもらえるようになれたら嬉しいですし、そう言ってあげたくなる人が周囲に増えたら、一層喜ばしいのではないでしょうか。
(文=松崎久純/グローバル人材育成専門家、サイドマン経営代表)