大手住宅メーカーの積水ハウスが中堅ゼネコンの鴻池組(非上場)を傘下に収める。鴻池組の全株式を保有する持ち株会社鳳(おおとり)ホールディングス(HD)の優先株を三井住友銀行から取得。優先株を普通株に転換することで、2016年1月27日付で鳳HD株式の33.3%を握り、持ち分法適用会社にする。
さらに同日付で鳳HDの優先株を引き受ける。優先株は19年10月以降に普通株へ転換できる。すべてを普通株に転換した場合、積水ハウスの出資比率は最大で45%になる。一連の取得額は公表していない。鳳HDと鴻池組にそれぞれ役員2人を派遣する。
積水ハウスがゼネコンを買収するのは初めて。鴻池組はオフィスビルや文化施設の施工に実績を持つ。積水ハウスはこれまで外注していた大型マンションなどの工事を鴻池組に発注し、都市開発事業をグループで一貫して手掛ける体制をつくる。
鴻池組は1871(明治4)年に創業した老舗建設会社。社名からみて、江戸期の大豪商、鴻池善右衛門一族の会社とみられがちだが関係はない。ゴルフ場の開発などを積極化し、バブル崩壊で経営が行き詰った。03年に持ち株会社として鳳HDを設立。持ち株会社体制への移行と同時に、三井住友銀行の資本支援を受け、近年は業績が回復していた。
15年9月期連結決算の売上高は前期比4%増の2357億円、営業利益は同55%増の145億円、純利益は4倍の35億円だった。三井住友銀行が持つ優先株は今回の売却でゼロになる。三井住友銀行が積水ハウスに売り渡したわけだ。
積水ハウスは戸建て住宅販売戸数では首位。大規模都市開発に強みをもつ。だが、戸建てやマンションの建設・賃貸から商業施設・事業施設運営へと総合展開し、各分野で有力なプレーヤーとなった大和ハウス工業に業績で水をあけられた。
積水ハウスの16年1月期の売上高は1兆9200億円の見込み。大和ハウスの16年3月期のそれは3兆1800億円を予想。売上高で1兆円以上の大差がつく。鴻池組を買収したのは大和ハウスを追いかけるためだ。
中堅ゼネコン再編
ゼネコンを買収することで先行したのは大和ハウス。08年4月に大和小田急建設を傘下に収めた。大和小田急建設は小田急電鉄を中心とした鉄道土木と民間マンションが得意。13年1月には中堅ゼネコンのフジタを完全子会社にした。今年10月1日付で両社が合併。存続会社はフジタ。
この合併によりフジタは小田急線の沿線開発や鉄道土木に軸足を移した。20年の東京五輪に向けた建設投資の増加と五輪後の国内建設市場縮小など長期的な環境変化を見込んで、大和ハウスは2社を合併させたという。
15年3月期の売上高はフジタが2356億円、大和小田急建設は665億円。単純合計で3021億円になる。鉄骨プレハブ住宅メーカーの両雄だった大和ハウスと積水ハウスは、傘下に中堅ゼネコンをもつ体制を整えた。個人住宅から公共工事までをカバーする異色のグループが誕生した。
上場スーパーゼネコン4社の16年3月期の売上高見込みは以下の通り。
・大林組:1兆8000億円
・鹿島:1兆7000億円
・清水建設:1兆6400億円
・大成建設:1兆5500億円
一方、大和ハウスは3兆1800億円、積水ハウスは1兆9200億円で、スーパーゼネコンといえども両社の売り上げには及ばない。
建設業界でスーパーゼネコンの地位は不動だが、中堅ゼネコンの再編は必至とみられている。国土強靭化基本計画に伴い老朽インフラの整備が進められ、公共工事の復活がゼネコンに追い風になった。しかし、20年の東京五輪後は建設市場の縮小は避けられない。
1900年代後半から2000年代に前半かけて、バブル崩壊で不動産投資にのめり込んで危機に陥った中堅ゼネコンの再編・淘汰が銀行主導で進められた。今回、大和ハウスグループのフジタと大和小田急建設が合併し、積水ハウスは鴻池組を買収した。
これで中堅ゼネコン再編の口火が切られた。中堅ゼネコンは「合併しても入札による売り上げが2倍増えるわけではない」と統合に消極的だったが、市場が縮まれば再編は待ったなしだ。中堅ゼネコン同士の組み合わせになる可能性が高い。
ただ、第1次取得者向けの比較的価格の安い建売り住宅分野で、13年11月に6社が統合して発足した飯田グループホールディングスの16年3月期の売上高は1兆1259億円の見込み。中堅ゼネコンを上回り、スーパーゼネコンに迫る。中堅ゼネコンの再編の受け皿になる可能性を秘めている。
(文=編集部)