自身の不倫報道を受け、謝罪会見で「いいお友達」と述べたタレントのベッキーさん(今月6日)、集団食中毒事件の際に「私は寝てないんだよ」と報道陣に抗議する姿がテレビで流れてしまった元雪印乳業(現雪印メグミルク)社長(2000年)、「(産地)偽装は担当者の独断」と言い切った料亭「船場吉兆」社長(07年)、「(メニュー)偽装ではなく誤表示」と語った阪急阪神ホテルズ社長(13年)――。
これらは、すべてお詫び会見への対応としては失敗例です。
コップの理論とは、会見まで時間がないときでも、まず手に持ったコップの中にお詫びしなければならない事項、事故、ミス、偽装など関係する情報をすべて集めることです。
そのなかには、技術畑でない責任者が説明できない技術情報があるかもしれません。工場や会社の責任者になったときには、自身が技術畑ではなくとも、日頃から技術情報を集めて工程内の事項を説明できるようにしておくことが大切です。
製造方法や原料に関して一番詳しく説明できるのが、会社の責任者である必要があるのです。
そして事故時の謝罪会見では、コップになみなみと注がれた事故情報を一気にその場で伝えつつ、記者の質問に対して丁寧に答えることが必要です。カメラを通じて視聴者に「何か隠しているのでは」と感じさせてはならないのです。責任者自身の言葉で、一気にコップにたまっているすべての情報を消費者に伝えなければなりません。
そして不祥事を起こしても、責任者が「本当に改善をしていい会社にしたい」と思えば、それはカメラを通じて見ているほうに伝わるはずです。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)