バレンタインデーが近づくなか、チョコレートの原料になるカカオについて、近年注目が高まっている。紀元前の中央アメリカに起源を持つとされるカカオは、赤道を中心とした南北20度以内のいわゆる「カカオベルト」と呼ばれる限られた地域で主に栽培されているがゆえに、生産量も限定されている。
一方で、世界的な需要は拡大しているため、カカオの商品価格はこのところ高騰しており、消費国では自国での生産に関心が向いている。安定供給の可能性をにらんで、日本国内でも栽培研究が始まりつつある。
チョコレートなどのOEM(相手先ブランドによる生産)を行っている平塚製菓(埼玉県草加市)の平塚正幸社長は、東京産のカカオを使ったチョコレートづくりに取り組みたいと、2010年に小笠原諸島の母島で独自にカカオ栽培を開始した。この取り組みに小笠原村で折田農園を経営する折田一夫さんが共鳴し、プロジェクトを共同で進めてきた。
当初は挫折の連続だった。10年にカカオの木が167本発芽したものの、すべて枯れてしまい、あえなく失敗。翌年に折田農園と共同で再チャレンジを試みるが、大規模な農地の整備が必要で、それには重機が必須だったが、島にはなかった。このため本土から27時間以上かけて輸送する必要があったという。さらに、普通のビニールハウスでは風で飛ばされたり塩害を被ったりしてしまうので、特注のハウスにしなければならず、資機材も本土から輸送したという。こうした時間をかけて、11年8月にハウスの1号棟が完成。翌年4月から栽培がスタートした。
13年10月に、待望の初カカオが収穫された。その後も手探りで、発酵・乾燥のプロセスに取り組んだ。15年3月、実に構想から13年を経てチョコレートの試作に成功。16年には、板チョコにして1万5000枚分に相当する0.5トンのカカオ豆の収穫を見込む。こうした成果について、2月9日に都内で発表する。
無農薬でフルーティー
プロジェクトへの総投資費用はこれまで1億5000万円にのぼった。補助金を申請する方法もあったが、時間がかかるため、すべて平塚製菓が負担した。
国産カカオのメリットは、無農薬で栽培できるほか、防かび剤などを使う必要がなく、ヘルシーで安全なチョコをつくることができる点にある。味もフルーティーで十分満足できる水準だという。