経営トップの交代発表が相次いでいる。経済界に大きな影響力を持つ金融機関や流通業界の後継者人事は、非常に興味深い。
MUFG
再編を重ねてきた金融機関のトップ交代が相次ぐ。トップ人事を見れば、統合・合併後、どこが主導権を握っているかがはっきりする。交代はいずれも4月1日付である。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の銀行は旧三菱色が一段と鮮明になった。中核銀行の三菱東京UFJ銀行は副頭取の小山田隆氏が頭取に昇格し、頭取の平野信行氏は会長に就く。平野氏は持ち株会社MUFGの社長兼CEO(最高経営責任者)を引き続き兼務する。
小山田氏は旧三菱銀行出身。2014年からは副頭取としてグループ内の連携や海外事業の強化を掲げた中期経営計画をまとめた。合併後、旧三菱銀行出身者がトップの座を占めており、銀行の頭取の次は持ち株会社社長も務めるのがお決まりのコースとなっている。
三菱UFJ信託銀行は専務の池谷幹男氏が社長に昇格する。社長兼会長の若林辰雄氏は会長職を継続する。池谷氏は旧三菱信託銀行出身だ。
保険業界
東京海上ホールディングス(HD)傘下の東京海上日動火災は副社長の北沢利文氏が社長に昇格する。社長の永野毅氏は代表権のある会長だ。永野氏は持ち株会社東京海上HDの社長を続投する。北沢氏は旧東京海上火災保険出身である。
MS&ADホールディングス傘下の三井住友海上保険は副社長の原典之氏が、あいおいニッセイ同和損害保険は取締役専務執行役員の金杉恭三氏が社長に昇格する。三井住友海上社長の柄澤康喜氏、ニッセイ同和社長の鈴木久仁氏は、それぞれの会社の会長、副会長に昇格する。持ち株会社MS&ADHDは社長の柄澤氏、会長の鈴木氏の体制に変わりはない。
損害保険ジャパン日本興亜は副社長の西沢敬二氏が社長に昇格。社長の二宮雅也氏は代表権を持つ会長になる。損保ジャパンの社長交代は、旧損害保険ジャパンと旧日本興亜損害保険が昨年9月に合併・発足して以来初めてである。会長は日本興亜損保出身の二宮氏、社長は損保ジャパンの西沢氏と棲み分けている。持ち株会社である損保ジャパン日本興亜ホールディングスは、会長が二宮氏、損保ジャパン出身の桜田謙悟氏が社長兼CEOだから、損保ジャパンが主導権を握っているといえる。