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出版業界に激震、「脱・取次」広がる…書店と出版社双方に恩恵、マージン中抜きも不要

文=肥沼和之/ジャーナリスト
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 2015年11月末、京都市上京区の鴨川にほど近い住宅街に、一軒の書店がオープンした。お店の名前は誠光社。売り場面積20坪弱のこの小さな書店が、出版業界全体にイノベーションをもたらそうとしている。店主を務める堀部篤史氏は、関西随一の名物書店であり、英ガーディアン紙による「世界の素晴らしい書店ベスト10」にも選ばれた、恵文社一乗寺店(京都市上京区)で13年間店長を務めた人物だ。

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 アマゾンや大手書店チェーンに押され、街の書店が減少し続けている現在。新刊書店の新規オープンも少ない。堀部氏はそれらの理由として、既存の流通構造に問題があると指摘。街の書店が生き残る術として“直取引”という方法を採用し、動き出した誠光社の取り組みに迫った。

理想的な書店を実現

 出版業界の流通は、出版社がつくった本を、取次が全国の書店に配本する仕組みだ。取次はいわゆる卸問屋の役割を担っている。しかし、取次を経由するとマージンが発生し、本が売れたときに書店に入るのは代金の2割と、小売業のなかでもかなり利幅が小さい。そのため中小の書店は、利幅の大きい雑貨を扱ったり、カフェなどの複合店舗にしたりせざるを得ないのが現状だ。

「恵文社一乗寺店で店長だったときも、自分の“したいこと”と“すべきこと”の間にギャップを感じていました」と堀部氏は明かす。同店の売り場面積は約90坪で家賃も高く、人件費も高額。そのため、売れそうな本を揃えたり、利幅の高いアイテムに頼ったりせざるを得なかった。堀部氏はその状況を是とせず、独立の道を選択した。

 こだわったのは、「本を中心とした商材を扱い、嗜好性が強くて面白い品揃えをする。そして店主が自ら接客をして、お客様との距離が近く、地域に親しまれる書店を目指したい」ということ。上記を満たし、なおかつ経営的にも成立する書店像を考えたとき、出版社との直取引という選択肢は必然だったと堀部氏は話す。

 書店が新規出店をする場合、大手取次と契約するためには、高額な契約金が必要となる。そのため書店を始めたいと思っても、多くの人は二の足を踏まざるを得ない。しかし直取引であれば、契約金は不要。マージンも不要なので、一冊売れたときの利幅も大きくなり、雑貨などに頼る必要がなくなるのだ。

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