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出版業界に激震、「脱・取次」広がる…書店と出版社双方に恩恵、マージン中抜きも不要

文=肥沼和之/ジャーナリスト
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 店舗の規模を小さくしたのも必然だった。誠光社は2階建てで、1階が店舗、2階を住居にすることで家賃を抑えている。接客や店舗運営も、夫人に手伝ってもらうほかは基本的に堀部氏一人で行っている。そのため人件費も不要で、客との距離も自然と近くなる。また、訪れる客は、同店の嗜好性が高い商品構成を好んで来る人がほとんど。そのためまとめ買いをする客も多く、一般的な書店よりも客単価は高額となる。

 このように、経費を抑えて利益率を上げたことで、全体的な売り上げが小さくても成立し、客との距離も近い理想的な書店を実現できたのだ。

変わる出版業界

 誠光社が成立する理由の一つとして、堀部氏は出版社のビジネスモデルが変わってきていることを指摘する。出版社はこれまで、数万~数十万部売れる「ベストセラー本」をつくり、取次を通じて全国の書店に配本・販売してきた。しかし、現在の出版業界は、販売部数が3000~5000部でも成り立つマーケットに変わってきているという。部数は少なくても、そのぶん嗜好性が高く、面白い本をつくる出版社が増えている。そこでつくられた本は、特定の書店に置かれるだけで十分に成立する、というわけだ。

「初版で1000部を刷ったとします。それを10冊仕入れてくれる書店が100店舗あれば、完売しますよね」(堀部氏)

 つまり全国に配本する必要がなくなるため、出版社と書店の直取引が成立する。取次は販売実績を基に配本するため、規模が小さい街の書店は欲しい本を入荷できないことも多い。このように取次に配本を決められることや、マージンを支払う必要性もなくなり、出版社・書店の双方のメリットが大きくなる、というわけだ。

 誠光社は、オープン直後から目標の売り上げもクリアし、経営は順調だという。本のマーケットが縮小し、街の書店が減り続けている昨今。誠光社の取り組みは、既存の流通の仕組みに一石を投じ、新しい可能性を示してみせた。街の書店の未来は、自分たちで切り開く時代に差し掛かっている。
(文=肥沼和之/ジャーナリスト)

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