三菱東京UFJ銀行の頭取交代が注目を集めている。現トップの平野信行頭取は、グループでの純利益1兆円超えを果たし、国内ではしのぎを削りあった三井住友銀行を業績面では突き放した。果たして、4月に次期頭取に就任する小山田隆副頭取は名実共に業界首位の座を揺るぎないものにできるか。一部では不安視する声も囁かれるなか、“小山田丸”の出航まであと1カ月半となった。
「銀行の頭取レースは番狂わせが起きにくいが、競馬でいえば単勝1.1倍の大本命」(メガバンク関係者)との前評判通り、頭取レースを勝ち上がったのが小山田氏だ。
経歴を見れば、前評判が大げさでないことは明らかだ。東京大学経済学部を卒業後、三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。銀行の中枢である企画畑を歩き、旧UFJグループとの経営統合に手腕を振るった。
国内では親密行の十六銀行と岐阜銀行の合併を実現させ、海外事業では平野氏が主導した米モルガン・スタンレーとの資本提携を下支えした。2015年6月に持株会社の三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が委員会設置会社に移行後は、新設されたCOO(最高執行責任者)に就任。禅譲への布石は打たれていた。
意外な欠点
まさにプリンスとの評判に違わぬ実績だが、就任を発表した記者会見では厳しい質問も飛んだ。
「小山田さんの海外経験の少なさを指摘する質問が相次ぎました。立ち会った広報は冷や冷やだったのではないでしょうか」(全国紙経済部記者)
小山田氏は米ニューヨーク支店への在籍はあるが、国際部門の重責を担った経験は皆無。会見では、国内業務が少子高齢化や企業のグローバル化で縮小均衡が必至ななか、海外事業を牽引するには経験が不足しているのではとの質問が少なくなかった。本人も自覚しているのか、「消え入るような声で回答する姿は見るに堪えなかった」(同)という。
実際、就任発表会見前には週刊誌に「英会話を猛勉強している」と書かれる始末。競合の三井住友銀行の国部毅頭取、みずほ銀行の林信秀頭取が国際畑出身で英語が堪能なのとは対照的な一面を晒された格好になった。