横浜傾斜マンション建替、三井不動産が詳細案提示を先延ばし住民困惑…建替難航の懸念浮上
施工ミスマンション問題が続発している。
昨年10月に発覚した神奈川県横浜市都筑区の「パークシティLaLa横浜」の杭打ち不良によるマンション傾斜問題に続き、今年2月には横浜市西区のマンションで、建物内部を通る鉄筋を誤って切断した疑いが強まった。同マンションを販売した住友不動産が、全棟建て替えの提案を行うことが明らかになった。
この横浜の“鉄筋切断マンション”では、3月に管理組合がアンケートを実施。アンケートでは住民の約8割が全棟建て替えを希望していることがわかった。26日の住民説明会で住民は住友側と交渉を進めたという。
建て替えまでの高いハードル
施工不良次第でマンションは建て替えになる――。こうした前例ができつつある。
そこで今回、先行事例となった“傾斜マンション”の現状について、LaLa横浜管理組合にインタビューした。
同組合は、2月27日に開いた総会で区分所有者に全4棟の建て替え方針を提案し、賛成多数で承認されている。今後は建て替えを前提にした手続きが進み、区分所有法で定められた「区分所有者の5分の4以上の同意」を得て、9月頃までに正式決定する予定だという。
この2月の総会は「建て替え決議」ではなく「建て替え方針の決定」だった。「区分所有者の5分の4以上の同意」というハードルが高く、総会の開催にこぎつけながらも建て替え決議の議案が否決される事例もある。
しかしLaLa横浜では、区分所有者を対象に実施した2回目のアンケート(1月)で、全棟建て替えを全4棟705戸の89.1%に当たる628戸(回答数685戸の91.7%)が希望していることが明らかになっているために、2月の総会で区分所有者の「5分の4以上」の同意を得る「建て替え決議」を行うものと思われていた。それにもかかわらず、なぜ「建て替え決議」ではなく「建て替え方針の決定」だったのか。
「建て替え決議をするためには、建て替えに関する情報一式を決議の2カ月前には区分所有者に通知する必要があるという手続き上の問題があります。さらに、現状では『全棟建て替え』のほか、『一部建て替え』『部分補修』という選択肢が三井不動産レジデンシャル側から提示されていて、その内容案の可能性を検討してから決議をすることが必要なのです」(管理組合)
また、国土交通省がリリースしている『マンションの建替えに向けた合意形成に関するマニュアル』の「ステップⅡ-8」にも、方針決議は区分所有法に定められている手続きではないが、建て替え決議に至る合意形成を着実に高めていくことを目的とする手順として掲載されている。
三井不動産レジデンシャル側は3月いっぱいをメドとして部分補修のための調査を行っており、LaLa横浜はその調査結果を待っている段階だ。その後、部分補修案などで現実的に問題が解決するのか検討することになる。