山崎製パンは米モンデリーズ・インターナショナルと結んでいるライセンス契約を8月末で終了する。
これにより、子会社のヤマザキナビスコで販売してきた「オレオ」や「リッツ」など4つのブランドのビスケットやクラッカーを国内で製造・販売できなくなる。9月からは、モンデリーズの日本法人が売ることになる。ヤマザキナビスコは9月1日にヤマザキビスケットに社名を変更し、自社開発製品である「チップスター」などの販売を継続する。
モンデリーズとの契約解除を発表した後、山崎製パンの株価は急落。2月15日には14%安の2099円まで売られた。値下がり率は東証1部上場で上位となり“ナビスコショック”と言われた。なお、3月25日の終値は2341円と10%強、株価は戻っている。
山崎製パンがモンデリーズとの関係を解消する背景には、世界の食品業界の再編の動きがある。
「下請けとして製造だけやってくれ」との要求
モンデリーズは、かつてクラフトフーズという商号だった。2012年10月、クラフトフーズは北米の食品部門を切り離して新会社を設立、クラフトフーズ本体はモンデリーズと商号を変えた。
また、味の素との合弁会社で、インスタントコーヒーなどを製造・販売する味の素ゼネラルフーヅ(AGF)を15年、味の素に売却した。AGFは1973年に味の素と米ゼネラルフーヅ(現モンデリーズ)が折半出資で設立した。セブン-イレブン・ジャパンのレギュラーコーヒーにも焙煎豆を供給している。14年3月期の売上高は1448億円だった。
モンデリーズはノンコア事業の整理の一環として、関係会社で保有していたAGFの50%の株式を270億円で味の素に売却した一方で、コア事業と位置付けている菓子事業は自社に取り込む意向だ。そのため、山崎製パンに販売権の返上を要求したのだ。
2月12日の記者会見で山崎製パンの飯島延浩社長は、「下請けとして製造だけやってくれという内容だった」と悔しさを滲ませた。この要求は製パン業界王者のプライドをいたく傷つけ、かくしてモンデリーズとの契約解消に至った。
ヤマザキナビスコ、売り上げ・営業利益共に過去最高
ヤマザキナビスコは70年、山崎製パン、米ナビスコ(現モンデリーズ)、日綿実業(現双日)の合弁会社として発足した。88年、山崎製パンはナビスコが保有していた全株式を買い取り、子会社にした。現在の資本金は16億円で、出資比率は山崎製パンが80%、双日が20%。15年12月期の売上高は前期比9.7%増の402億円、営業利益は33.1%増の34億円で、共に過去最高となった。