上場企業で3月決算の場合、多くは6月に株主総会が開催される。特に6月29日には800社が総会を開催する。
そのなかで、注目を集める企業がいくつかある。たとえば、関西電力など電力各社。4月から電力の小売販売が解禁されたことから、今後の経営方針などをめぐり議論が白熱することが予想される。昨年発覚したマンションの杭打ち偽装問題に関連して、三井住友建設や日立ハイテクノロジーズに注目する向きもある。
また、大荒れになる可能性があるとして市場関係者が関心を寄せているのは、東亜建設工業だ。同社は、空港の液状化対策工事で国土交通省に虚偽の報告をしていた。羽田、松山、福岡の3つの空港の滑走路や誘導路の液状化対策の工事5件で、液状化を防ぐための特殊な薬剤の注入が不十分だったのに、書類上のデータを改竄して「計画通りに完了した」と嘘の報告をしていた。
不正が発覚したのは、下請け企業からの通報が発端だった。羽田空港のC滑走路で、液状化対策のための薬剤注入に失敗。計画量の5%しか入らなかったのに、国土交通省に「全量を注入した」と虚偽の報告をした。
その後、羽田、松山、福岡の3空港の4工事でも、同様の虚偽報告と施工不良があったことが明らかになった。
2014年10月から15年7月にかけて、熊本県八代港で行った岸壁の土砂流出防止工事でも、ボーリング調査の結果を捏造していた。
さらに、成田国際空港株式会社(NAA)が東亜建設工業など共同企業体(JV)に発注した、航空燃料を積んだタンカーが接岸する千葉港頭の護岸耐震補強で、施工不良があったと5月26日に発表した。工事では、東亜建設工業が独自に開発した「バルーングラウト工法」が採用され、地震時の液状化を防ぐ目的で薬液を護岸に注入して地盤の強化を図ることになっていた。
6月1日に相談役に退いた松尾正臣元社長は、5月24日の16年3月期決算説明会で謝罪。「新しい工法を使う際に、必ず成功させようというプレッシャーがあった。これが『失敗は許されない』との社内風土を生んだ」と背景を説明した。
調査が進んでいるのは公共工事だけで、民間から受注した工事については調査を続行する。今後、さらに改竄案件が判明する可能性もある。
スキャンダル企業の株主総会も要注意である。