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「電力自由化」狂騒曲、早くも終焉か…消費者にメリット少で新電力への切り替え進まず

文=井手秀樹/慶應義塾大学名誉教授
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「電力自由化」狂騒曲、早くも終焉か…消費者にメリット少で新電力への切り替え進まずの画像1「Thinkstock」より

 一般家庭への電力小売が自由化されて3カ月あまり。新電力会社から請求書が届かない、電気使用量がゼロなど、トラブルが報告されている。新電力に切り替えた世帯は全国で約120万、全体の2パーセント弱にとどまる。

 それも、切り替えのほとんどは、首都圏や関西圏で、北陸や中国、四国管内では数千件しか切り替えがないのが現状だ。

 新電力のシェアは想定内のレベルで、今後「新電力」のシェアが急激に伸びるとも思えない。各社の料金メニューを比べても大差なく、思ったほど選択肢がないと感じた人も少なくない。今は切り替えせずに静観するという人は多いだろう。電力を自由化しても、従来の電力会社のシェアは圧倒的に高いまま、という結果に終わる可能性は高い。

 また、新電力の料金は電力多消費世帯にメリットがあるのがほとんどで、低所得者で電力消費量の少ない世帯には、ほとんどメリットがない。逆に今後、そのような世帯の電気料金が値上がりする可能性さえある。メリットを受けるのは多消費世帯のみ、これが自由化だ。

地産地消への取り組み

 ただ、電気の自由化は、電気の購入先を選べる自由だけではない。地方では自分達で電気をつくり、利用する地産地消の取り組みがみられる。2011年の東京電力福島第一原発事故を契機に、電力会社中心の「大規模集中型システム」から「小規模・地域分散型システム」への転換だ。

 昨年度、電力自由化を見据えて、農林水産省の委託プロジェクトで、太陽光、バイオマス等再生可能エネルギーによって農業・林業等の活性化を図る可能性をいくつかの候補地について検証した。

 地産地消の電力によって産業や雇用を生み、循環型の社会を構築しようというものだ。電力自由化を契機にエネルギーという手段を利用して、地域の活性化を図ろうという試みは多い。
 
 全国初となる自治体主導の新電力として、太陽光を活用した群馬県「中之条電力」、地域金融機関と民間のノウハウを活用した地方創生のモデルケースとしての「みやまスマートエネルギー」、地元のガス会社主導の「とっとり市民電力」や市内のごみ焼却場で発電された電気を公共施設に売電する「北九州パワー」などが代表的な事例だ。こうした地域密着型の電力・エネルギー事業は、小さなものまで含めると180ほどある。多くは太陽光、バイオマスだ。

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