4月1日から電力小売りが自由化される。東京電力からの乗り換え客を狙う企業による新規参入が相次ぐなか、いまのところその最右翼に位置しているのが東電の長年のライバル東京ガスである。
東京ガスは2月24日、首都圏の一般家庭向けに提供する電気料金プランに約5万4000件の申し込みがあったと発表した。東電管内での契約切り替え(東電からの離脱)の申込数は約9万件あるとされているが、2月下旬までに東ガスがほぼ過半を占めたことになる。
東ガスは昨年末に家庭向けの料金プランを発表し、積極的にテレビコマーシャルを流すなどして消費者にアピールしてきた。その後、競合各社の料金プランをにらんで、2月1日に追加値下げに踏み切ったところ、ファミリー層を中心に支持を得て、1月29日時点の約1万1000件から一気に申し込みが急増した。
東京ガスの料金プランの特徴は、解約手数料がかからないほか、ポイントや付帯サービスなどが充実している点だ。家庭での利用状況にもよるが、ガスとのセットで料金が安くなるケースが多いため、首都圏のほとんどの世帯が対象となる。ゆえに一般家庭が電力契約の切り替えを検討する時には、一番最初に意識する有利なポジションにいるのは確かだ。インフラ企業としての実績や安心感があるのも強みになっている。
東京ガスが東電からの「離脱客」を狙い、新規顧客の開拓を積極的に進める背景には、都市ガス事業の自由化への危機感がある。17年4月から都市ガス事業の小売全面自由化が予定されており、東京ガスとしても正念場を迎えている。経営基盤の一段の強化を図るため、「新電力ナンバーワン」の地位を固めようとしているのだ。
消費者は様子見
こうした新規事業者を巻き込んだ熱い戦いの一方で、消費者の側は意外にも様子見気分が強い。
広告大手・電通の調査によると、4月からの電力小売り自由化について、「内容まで知っている」が8.9%、「内容は分からないが、自由化されることは確かに知っている」が53.3%という結果が出ている。つまり、「認知」は進んでいるが「理解」はこれから、といった傾向である。
また博報堂の別の調査によると、電力小売り自由化時に電力会社を「変えてみたい」という人は64%に上るが、変更の時期については「自由化後すぐに変える」人が17.2%である一方、「最初に変えた人の様子を見て変える」が49.2%に上り、関心はあるが様子見気分も依然として強い、というのが実情だ。