トヨタ、幹部の呆れた恥部や社内クーデターがモデル…大ベストセラー本が波紋
トヨタ自動車をモデルにしたとみられる企業小説『トヨトミの野望』(講談社)が波紋を広げている。小説のコア部分は2つある。ひとつは、サラリーマン社長と創業家の対立だ。ずばりこれは、豊田家を祭り上げるための持ち株会社構想を画策した奥田碩元社長・会長(現相談役)と、豊田章一郎現名誉会長・章男現社長親子との確執にほかならず、トヨタにとって最大の「タブー」とされてきた。もうひとつのコアは、章男氏が本当に社長を務めるだけの資質があるのかを問う部分だ。
小説ではあるものの、「世間一般には知られていないトヨタの『奥の院』で本当に起きたエピソードが随所に散りばめられている」といった声も、現役の自動車担当記者から出ている。さらに、経済記者で覆面作家を名乗っている作者が謎めいていて、「当初は、大手新聞社出身のフリージャーナリストが書いたことが定説になっていたが、どうもそれは執筆者を特定させないためのカモフラージュで、実際には複数の現役記者が高名な作家に情報提供して書かせたらしい」(財界筋)といった噂も広がっている。
版元の講談社の関係者によると、発売後約1カ月で瞬く間に4刷まで増刷して販売は好調というが、どこまでが事実に基づき、どこまでが創作なのか、という問い合わせもあるそうだ。なかでも「登場人物のなかには容易に特定できる人物もいれば、できない人物もいる」といった声が多いという。
そこで当サイト編集部が、独自の取材によって、登場人物は誰がモデルなのか、エピソードはどこまで本当なのかを割り出してみた。
目を疑うエピソード
まず、主人公のトヨトミ自動車社長の武田剛平は、奥田碩元社長・会長がモデルであることは間違いない。小説中の武田は、東商大の柔道部出身。奥田氏も一橋大柔道部出身だ。武田の生家は九州筑豊地区の炭鉱会社となっているが、奥田氏の生家は三重県内にあった地場証券会社なので、この部分はフィクションだろう。
もうひとりの主人公、豊臣統一は明らかに豊田章男氏だ。統一は城南義塾大を出て、米国のビジネススクールでMBA(経営学修士)取得となっているが、章男氏も慶應義塾大卒業後、米バブソン大でMBAを取得している。
「小説に出てくる武田と豊臣統一の話は、事実に基づく話が大半」(名古屋財界担当記者)といった見方もある。ただ、編集部が目を疑ったのが冒頭部分のエピソードだ。統一氏が女性とのトラブルから暴力団のフロント企業に監禁される場面が出てくる。さすがにこれは完全フィクションだと思っていたが、元トヨタ担当記者が明かす。