12月に入り、タクシーが関係する死傷事故が立て続けに起きている。
3日、福岡県福岡市の病院ラウンジにタクシーが突っ込んだ事件では、3人が死亡し7人が重軽傷を負う惨事となった。6日には東京・南青山3丁目の交差点でタクシーが歩道に乗り上げ4人が重軽傷を負っている。9日にも、東京・足立区でタクシーが路肩で手を挙げた女性に気づいて車線変更したところ、後方のワンボックスカーと衝突。タクシーに乗ろうとした女性はワンボックスカーにはねられて死亡している。
現役タクシードライバーである私は、こうした事故を見るたびに「十分に注意しなくては」と思わされる。
「足切り」と呼ばれるノルマ達成のため、多くのタクシードライバーは乗客を降ろすと、少しでも早く次の乗客を乗せようと駅や病院に向かう。その際、ついスピードを出してしまいがちだが、これは事故の原因となりやすい。
自損事故であれば自分の損害だけで済むが、乗客や歩行者などにけがをさせてしまうのは、プロとして許されない行為だ。ましてや死亡事故でも起こそうものなら……考えただけでもゾッとする。
東京ハイヤー・タクシー協会の「東京のタクシー2016」によると、東京を走るタクシーは法人個人あわせて4万4850台。警視庁によると、2015年に都内で発生したハイヤー・タクシー関連(第1当事者、タクシーは法人個人の合計)の人身事故は3622件。単純計算だが、都内を走るタクシーの約12台に1台が、1年の間に人身事故を起こしていることになる。
タクシーが事故るポイントとは?
タクシーの人身事故で多いのが、バイクや自転車と接触するケースだ。右折時に対向車の死角になる「右直事故」のほか、手を挙げた客を乗せるべく左車線に寄った際にバイクや自転車と接触するケースも少なくない。後方を確認せずにドアを開けての接触事故もお決まりのパターンだ。
特に、流し営業が主流の都内では、急に止まったり進路を変えたりしなければならないのもタクシーの性質だ。手を挙げた乗客に気づき、あわてて急停車してドアを開けることもあるが、このとき、自転車やバイクが迫っていることに気づかずにいると、予期せぬ事故を起こしてしまうのだ。
11年の東日本大震災以降、都内では自転車通勤をする人が増えているが、ときには「危ない」と思わされることも多い。もちろん、安全確認はドライバーの義務だが、バイクや自転車に乗っている人は、目の前のタクシーが停車したらなるべく距離を置いたほうがいい。後方確認を怠ったドライバーが、急発進したりドアを開けたりするかもしれないからだ。