1月20日のトランプ米大統領就任後、政策には先行き不安を高めるものが多い。1月27日には、中東などからの入国を制限する大統領令が署名された。各界から入国制限への批判が出るなか、トランプ大統領は司法を軽視する発言を行うなど、国内外で論争を巻き起こしている。2月9日にはサンフランシスコの連邦控訴裁判所が、この大統領令を差し止めた地裁の命令を支持した。トランプ政権は新しい入国制限を準備しているといわれ、先行きは不透明だ。
それでも、米国ではトランプ大統領への支持が根強いようだ。従来の政治家が変えられなかった社会環境を変えてくれるとの期待は強い。その期待に応えるために、トランプ政権は米国第一主義の取り組みを推進するだろう。それができないと大統領の支持率は低下するはずだ。
そうしたなかで10日に開催された日米首脳会談では、トランプ大統領は日本に対する“強硬姿勢”を封印した。経済面では、日米政府が対話を進め、公正な競争環境を整備することが約束された。この点において円安批判などの懸案事項は先送りされたといえる。
今後、日本はどう米国と交渉するかを真剣に考えなければならない。世界の政治動向を見ていると、米国のように自国第一の政治が進みやすくなっている。主要国の政治が自国優先に流れてからでは、公正かつ公平な競争環境の整備に向けた協議を進めることは難しくなる可能性がある。
根強いトランプ大統領への支持
1月20日に正式就任したトランプ大統領の政策運営を見ていると、保護主義政策と対外強硬策が顕著だ。保護主義に関する面では、トランプ大統領自ら、企業に生産拠点を米国に戻し、米国製の資材を用いて生産活動などを進めるように求めている。NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉、輸入品への国境税の適用も検討している。
そして、イスラム国への支援が疑われることを理由に、中東などからの入国を制限する大統領令に署名した。これは、宗教などを理由とする差別につながりかねない。米国の司法界、企業経営者などを中心に入国制限への反発が高まっているのは当然だろう。これに対してトランプ大統領は、自分自身の考えが正しく、大統領令を批判する司法関係者などが間違っていると、司法軽視の考えを示している。