出光、創業家からの「独善的」手紙公開で完全排除へ…合併阻止狙う創業家の不合理な主張
出光興産と昭和シェルは2015年に経営統合を目指すことで合意したが、これに強硬に反対して阻止してきたのが出光興産創業家の出光昭介名誉会長(89歳)である。昭介氏が掌握している同社株式の割合は3分の1を超え、経営統合が株主総会に提出されれば拒否権を行使できるとされている。上場企業ではあるが、これだけの割合の株式を掌握している昭介氏は、実質的にオーナーであるといってよいだろう。
袋小路に入った協議が、再開されたのもつかの間
創業家と出光の協議は、昭介氏が昭和シェルの40万株(0.1%)を取得して徹底抗戦の姿勢を見せた後、昨年7月11日以降中断していた。昨年末に出光が創業家側からの了解は積み残したままで昭和シェルの株を約31.3%取得したことをきっかけに、事態は水面下で動き出していたようだ。2月7日の決算記者会見で出光の小林総一広報CSR室長は、「2017年に入り代理人同士で複数回会った」と語っている。
代理人同士とはいえ、接触が再開されたことを洩らしたのが出光側というのは、それを公にすることによりさらなる接触や会談への環境づくり、地ならしを狙ったものと私には見えた。つまり計算づくで「接触再開」をディスクローズしたことにほかならない。
出光側がそんな判断に出たのは、袋小路に入ってしまった創業家とのコミュニケーションの扉も、そろそろ開くような素地が醸成されてきたという判断があったのだろう。出光系列のガソリンスタンドで組成されている「全国出光会(遠藤祐司会長)」が昨秋から、出光と創業家側に協議の再開を訴えていた。また、頑なな創業家側に対して世論の批判もあがっていた。本連載の昨年を振り返る記事の中でも、昭介氏を「16年資本家残念大賞」という表現で批判するに至っていた。
進展を模索した浜田卓二郎弁護士も辞任
2月7日の決算記者会見で出光側が示した会談前進への観測は、むなしい燭光だったようだ。同9日に出光興産の創業家代理人、浜田卓二郎弁護士が代理人を辞任したことが明らかとなったのである。
浜田氏は同日午前に昭介氏と面談し、今後の方針を話し合った。あくまで推測だが、昭介氏としては、「拒否を続けていた」としてきた出光側との協議が「実は再開されていた」と発表され、おもしろくなかったのではなかったか。浜田氏は同日付で創業家の資産管理会社、日章興産の代表取締役も辞任した。いわば、縁を切ったというかたちだ。