トヨタ自動車が早ければ3月1日にも発表するとみられる、グループ企業を含めた役員人事が明らかになった。
奥平総一郎専務が、完全子会社化したダイハツ工業の社長に転じる。奥平氏は現在、トヨタ研究開発センター(中国)の社長も兼務しており、中国でのハイブリッド車の現地開発の推進役を務めたほか、アジア・オセアニア地区のチーフテクニカルオフィサーも兼務している。開発の現地化で実績を残した。トヨタは今後、新興国専用車をダイハツの力を借りて開発する方針であり、タイにある開発拠点を名称変更するかたちで「トヨタ ダイハツ エンジニアリング アンド マニュファクチャリング」を置いて、ダイハツと協業での開発体制を強化する。こうした状況下で、奥平氏が適任者と判断されたもようだ。
日野自動車社長には同社副社長の毛利悟氏が昇格する。毛利氏は昨年、トヨタ専務から転籍したばかり。トヨタでは国内営業や中国事業での経験が長く、日野のグローバル化を推進していく計画だ。毛利氏が昇格した後には、トヨタから牟田弘文専務が移る見通し。牟田氏はトヨタでは生産技術の担当が長く、工場の生産ライン建設などで手腕を振るった。
日野は今後、「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」と呼ばれる、商品力向上とコスト削減を同時並行で展開する設計手法の改革を受け入れて、展開する方針だ。その際には開発部門と工場の連携が成否を決めるカギの一つとなるため、牟田氏に白羽の矢が立った。また、昨年、日野からトヨタの常務役員に移ってきてコーポレート戦略部を担当していた下義生氏は1年で日野に戻る。トヨタでの「修行経験」を生かして日野を活性化させていく。
トヨタグループの広告代理店、デルフィス社長にはトヨタ常務役員でタイ国トヨタ社長の棚田京一氏が転じる。後任のタイ国トヨタ社長には菅田道信TMAP-Japan室長が就く。タイはトヨタにとって戦略的な拠点だが、軍事政権樹立後は経済の低迷とともにトヨタの工場の稼働率も落ちており、舵取りが難しい局面。フィリピントヨタ社長を経験するなどアジアに強い菅田氏を起用して、タイ事業の再強化を図りたい考えだ。
社長の「業務秘書」経験者の抜擢
トランプ政権の誕生によって米国市場への対応も重要になっている。統括会社の北米トヨタ副社長には小川哲男常務役員を充てる。小川氏は現在、中国の統括会社であるトヨタ中国投資有限会社の社長を兼任しているが、かつて米国トヨタ自動車販売に出向していた経験があり、米国市場に精通している。中国で政府などと交渉してきた経験を生かして、北米トヨタでは渉外広報など管理部門を中心に担当するとみられる。
すでにトヨタの早川茂専務が副会長に昇格して日本経団連の副会長に就任する人事が発表されているが、早川氏の後任の渉外・広報本部長は決まっていなかった。後任には、専務で北米トヨタ副社長の永田理氏が小川氏と入れ替わりで帰国して就任する見通し。ただ、社内には、現在常務役員でインドネシアトヨタ会長の福井弘之氏や、同じく常務役員で総務・人事本部長の上田達郎氏を推す声もあり、最終調整している。
新任のトヨタ常務役員には、好田博昭CV統括部長が昇格する見通し。好田氏は1989年入社で、豊田章男社長の「業務秘書」を務めたことから評価が高く、「特別選抜」でこれまで昇進してきた。仕事もできると社内での評価は高い。昨年同じく特別選抜で常務役員に昇格した1988年入社の村上秀一氏も豊田社長の「業務秘書」を長く務め、「国内販売のエース」といわれてきた。「業務秘書」経験者の抜擢人事はトヨタの中では定着しつつある。
トヨタにとって日本人で初の女性役員も誕生する。同じく1989年入社の加古慈氏だ。常務役員ではないが、同じ待遇の常務理事就任が濃厚だ。レクサスの開発に携わり、技術系初の女性部長として話題を呼んだこともある。そのほか、トヨタ副社長の加藤光久氏、専務の嵯峨宏英氏は退任する見通し。
以上がトヨタグループ内で流れている、現時点での人事情報だが、正式な人事は近々発表される見通し。
(文=編集部)