NEW

ミスドの命「できたて」一斉廃止で存在意義薄らぐ…コンビニドーナツとの違い消滅

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ミスタードーナツの店舗(撮影=編集部)

 2月25日付日本経済新聞は「ダスキンは2020年度までに、『ミスタードーナツ』の約4割に相当する500店でドーナツの店内調理をやめる」と報じた。

 店内調理をやめて喫茶店形式への変更、持ち帰り専門店への切り替えを進める方針だ。こうすることで確かに人件費や設備費を抑えることができる。店内調理は人件費や技術習得の教育費がかかる。店内調理用の設備導入には費用がかかり、メンテナンスなどの維持費用もかかる。経費削減を進める狙いがあるといえる。

 ミスドを主力とするダスキンの外食事業は低迷している。本業の儲けを示す営業損益は、2014年3月期が4億円の赤字、15年3月期が2億円の赤字、16年3月期が14億円の赤字で、3期連続の赤字だ。16年4〜12月期では5億円の赤字となっている。

 ミスドの国内チェーン全店売上高は減少し続けている。13年3月期は1147億円あったが、16年3月期には915億円にまで減少している。一貫しての減少だ。店舗数(営業拠点数)は12年3月末時点で1373店あったが、16年3月末では1271店にまで減少している。

 店舗数の減少は、不採算店舗を閉鎖したためだ。収益性の改善を目指しているが、目処がついていない状況だ。1店舗当たりの売上高は12年3月期で8400万円だったが、16年3月期では7200万円にまで減少している。稼ぐ力が回復しなければ、利益を確保することはできない。経費を削減することも大事だが、それ以上に売上高を上げることが求められているといえる。

 ミスドの売りのひとつは、店内調理による「できたて」のドーナツを提供することだった。店舗ごとで生地の仕込みからドーナツを揚げるフライング工程、最後の仕上げまでをハンドメイドで行っていた。街のパン店やケーキ店のように、手間暇をかけたできたてのドーナツを提供することを誇りにしていた。

 売りであるできたてをアピールするために、調理の様子が見えるように店舗の改装を進めていた。15年10月31日付日本経済新聞は「『ミスタードーナツ』を運営するダスキンは30日、店舗の大規模改装に乗り出す考えを示した。店の外からドーナツを調理している様子を見えるようにして、店内への来店を促す。今後5年間で全国1300店のうち最大で1千店舗の改装を目指す」と報じていた。

 全1300店の8割近くになる1000店を、調理が見えるように改装する計画だった。しかし、500店で調理をやめるという発表からすると、大規模改装計画は中止または変更することになるわけで、大きな方針転換といえるだろう。店内調理によるできたてというセールスポイントを強化することよりも、経費削減と業態転換を優先させることを意味している。

ミスドがミスドではなくなる?

 外食産業の潮流として、調理の様子が見えるつくりの店舗は増えている。消費者の食の安全・安心に対する関心の高まりに加え、調理の様子を見て楽しむアミューズメント性が支持されているのだ。ミスドで、ドーナツができる工程を見て楽しむ消費者は少なくなかったはず。しかし、500店で調理をやめるのであれば、多くの人が楽しみを奪われることになる。

 さらに、大きな問題となるのがミスドのブランドイメージの低下だろう。実質的においしさが低下すること以上に、「ミスドが手づくりをやめた」というマイナスイメージが消費者に根づいてしまうことの影響は大きい。店内調理をやめるのが500店という実態以上のイメージ毀損が懸念される。

 近年、セブン-イレブンローソンなどのコンビニエンスストア各社がレジ横でドーナツを本格的に販売していることも、ミスドの業績を悪化させる要因となっていた。ただ、ミスドはできたてを売りにすることで、コンビニドーナツにはない差別化されたドーナツを提供することができていた。「コンビニドーナツはおいしくないが、ミスドのドーナツはおいしいから、買うならミスド」と考える消費者は少なくなかった。

 そうしたなかで、店内調理を縮小してしまえば、「ミスドのドーナツはコンビニドーナツと変わらなくなった」と思う消費者が続出するだろう。そういった認識が広がってしまったら、ミスドがミスドではなくなってしまう。一度定着してしまったイメージは、簡単には払拭できない。取り返しのつかない事態に陥る恐れがある。

 一方、ドーナツ市場は厳しい環境下にある。かつて大行列ができる店として話題になったクリスピー・クリーム・ドーナツは、販売の苦戦により多くの店舗の閉鎖を余儀なくされた。ミスドも例外ではなく、厳しい状況にある。売りがドーナツだけでは生き残れないともいえる。喫茶店形式への変更、持ち帰り専門店への切り替えは避けて通れないのかもしれない。

 ただ、ミスドはあくまでもドーナツ店だ。そのドーナツにブランド力がなければ、業態転換を推し進めても消費者には支持されないだろう。できたての代わりとなるポジティブな特長がドーナツに付加されなければ、マイナスの印象だけしか残らない。

 つまり、ミスドは今までより付加価値のあるドーナツを提供する必要がある。たとえば、ファミリーマートとライザップが共同で糖質制限(低糖質)の商品を発売して話題になったが、似たような形で低糖質ドーナツやトランス脂肪酸が含まれないドーナツを開発するのもひとつの手だ。つまり、ドーナツそのものに、まだ改良の余地があるのではないだろうか。

 ミスドは業績が低迷し、迷走している。それでも筆者はミスドに、おいしいドーナツを提供してくれることを期待したい。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。