去る3月15日に『創作あーちすと NON』を出版した、女優・のん。
昨年に公開され、大ヒットとなった劇場版アニメ『この世界の片隅に』の主人公・すずさんの好演を機に、LINEモバイルのCMに登場、岩手銀行のイメージキャラクターとして採用されるなど今また注目が高まりつつあるのん。『創作あーちすと NON』は、彼女の“あーちすと”としての世界観がまるごと楽しめる1冊だ。
さらに桃井かおり、清水ミチコ、矢野顕子、いのうえひでのり、宇野亞喜良といった語りがいのありそうな面々との対談も収録。女優として、創作あーちすととして、そして“素”を出すことについてなど、興味深いテーマについてもたっぷりと語っていたりもする。
今回の『創作あーちすと NON』発行記念インタビューでは、そんな彼女に創作活動について、対談について振り返ってもらった。
「思わぬことが起きるのが面白かったです」
―― 『創作あーちすと NON』の前半に収録されている「アクション・ペインティング!の時間。」のページなどを見ると、表情がどれもすごく楽しそうだったのが印象的でした。創作活動の中でどれが一番楽しかったですか?
のん 絵を描くのはすごく楽しかったですね。ドレスを置いてみたりして、壁に絵を描くだけじゃなくて、立体的にというか。平面だけでなくいろいろ使って表現できたので、新しいことにチャレンジできて、すごく刺激的でした。
―― 以前からイラストは描かれていましたが、こういう大きなセットで絵を描くのもまた一味違った楽しさがあったのではないですか?
のん これまではスケッチブックとかに水彩で絵などを描いていたんですけど、全然違いますね。今回は(大きな壁面に)滝を描いたんですが、モップで(絵の具を)のせていったんですが、絵の具がいい感じに垂れてきて、ちゃんと“水が下に落ちる”っていうことが表現できたんですよ。こういう思わぬことが起きるのが面白かったです。
―― 故郷(兵庫県神崎郡神河町)に帰って撮ったスナップ写真(「故郷の思い出を探しに」)も大変印象に残りました。『この世界の片隅に』のすずさんや天野アキなど、地方に根ざした物語でヒロインを演じられたのんさんだからこそ、故郷の良さや、自分にとって故郷とは何かということが見えてきたりしたのではないかと、勝手に想像して拝見したんですが。
のん 面白かったですね。小学生くらいまで住んでいたんですが、途中から引っ越したりして、本当に小さい頃のままの記憶だけが残っていて……実家に帰ってきたときでも行かないような、本当に10何年行ってない場所も巡ったりしたんですが、すると、道がすごく狭く感じたりとか、そこらへんの田んぼがもっと広いように感じていたのが「ちっちゃーい!」みたいにミニマムに感じるようになっていたり。その違いが面白かったです。
あと、全く変わっていないところもたくさんあったんですけど、中学校なんかは変わり果てていて、知らない学校みたいな感じになっていて。その中に当時お世話になっていた学年主任の先生がいらっしゃって、不思議な感じでしたね。歩いていると、景色を見て芋づる式に記憶が呼び起こされるのが面白かったです。
山に囲まれている土地で育ったので、田んぼに入ったり、草で遊んだりとか、虫と戯れたり、おたまじゃくしを飼育したりとか。そういう田舎独特の遊びで遊んでいたので、それは(すずさんを演じるのに)活かされてるかなぁと思いますね。自然が当たり前の中で過ごしていたので。